左から、つやちゃん、野中モモ、平岩壮悟
*「特集:YBA 90s英国美術は、いま何を語るのか」──YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)と、それを生んだ90年代という時代を今日の視点で振り返る、Tokyo Art Beatの特集シリーズ。展覧会「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」の開催にあわせて、90年代という特異点を、アートにとどまらない現代の多様な視点で見つめ直す。(随時更新)
東京・六本木の国立新美術館(2月11日~5月11日)、京都市京セラ美術館(6月3日~9月6日)で開催される展覧会「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」。1980年代から2000年代に至る英国アートシーンの文脈を再確認できる本展覧会の中心にあるのが、YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)らによる1990年代の作品たちだ。アートのみならず、音楽や映画、ファッションなど様々な分野においてブリティッシュ・カルチャーが脚光を浴び、世界から注目されていた時代。その熱狂の渦のなかで、アーティストたちは何を感じ、何をとらえて作品を生み出していたのか。そしてその熱にいま触れることはどのような意味をもつのか。ライター、翻訳家の野中モモ、文筆家のつやちゃん、編集者の平岩壮悟の3名に、それぞれの視点から90年代の英国アートとカルチャーを語り合ってもらった。
【チケット割引情報🎫】
Tokyo Art Beatの有料会員機能「オンラインミューぽん」を使うと「YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」展のチケット料金が200円OFFに! 会員ログイン後に展覧会ページからご利用いただけます。詳しい使い方はこちら。
──「YBA & BEYOND」展に向けて、90年代の英国カルチャーやアートシーンについて伺えればと思います。まず、野中さんは多くのアーティストを輩出したロンドン大学ゴールドスミス校に留学されていましたよね。
平岩 ゴールドスミスはまさにYBAのメッカですよね。ダミアン・ハーストもサラ・ルーカスも輩出している。
野中 そうですね。ゴールドスミスに通っていたのは1999年から2001年で、その後2005年ぐらいまでイギリスにいました。だからYBAのインパクトを感じたのはそれ以前、日本にいたときでした。

平岩 当時、日本ではどういう感じだったんですか。
野中 「いまイギリスのアートが熱い」という流れは、ブリットポップと一緒に入ってきていました。1998年には東京都現代美術館で「リアル/ライフ」展があり、佐賀町エキジビット・スペースでトレイシー・エミンの個展、ギャラリー小柳でジリアン・ウェアリング展も行われていました。渋谷のマンションの一室から恵比寿に移転したP-HOUSEでチャップマン兄弟も紹介されていましたし。もともと音楽を通して英国文化に興味があったので、自然と面白そうだと思っていました。おふたりは私よりはだいぶ世代が下だと思うんですけど、YBAにはどういう経緯で触れたんですか?

つやちゃん 自分は音楽が入口でした。ただYBAの作品には、サッチャー政権後の新自由主義が定着した社会の反動として「私性」を加工せず露悪的に出す部分があって、それが当時は少し距離を感じさせたんです。日本の文化は、私性を直接出すより比喩や別のレイヤーに逃がす傾向がありますよね。でもコロナ以降、日本でも同じような表現が増えて、むしろいまのほうがリアルに感じます。

──いまの日本のカルチャーは、どこに共通点を感じますか?
つやちゃん 社会状況として、当時のイギリスと現代日本は似ていると思います。希望が見えにくいなかで、DIY的なクリエイティヴが広がり、身体感覚と表現が地続きになっている。汚い部分も含めて出していく表現が増えています。

──平岩さんは、YBAと90年代のブリティッシュ・カルチャーに対してはどのような思いを抱いていますか?
平岩 僕は90年生まれなので、もちろん後追いなんですけど、高校時代に90年代のブリティッシュ・カルチャーを通して、ブリットポップ、アーティストでいうとオアシスを知ったのが最初の接点でした。僕もその後、2010年からイギリスの大学に行ったんですけど、周りの留学生はアメリカに行く人が圧倒的に多くて、イギリスに向かうのは大抵アートかファッションを学びたいという人だったんです。そのなかで僕は経済学部だったんですけど(笑)。でもカルチャー全般に興味があったから、そのメッカに行きたいという。アートスクールがたくさんあって、そこからいろいろな才能が出てくる、0を1にする土壌があるなっていうのはずっと感じていましたね。