展覧会キーヴィジュアル
京都国立博物館では、池内喜勝の個展「MUSORY 〜 池内喜勝 Experience 〜」が開催された。会期はすでに終了(11月15日〜16日)。
池内喜勝(作曲家としての名義はヨシカツ)は、日本アカデミー賞受賞映画の劇中歌ほか、数多くの楽曲を手がけてきた。本展は、池内の画家としての初個展であり、「生まれ育ったこの町で、これまで自分が手がけてきた作品を見ていただく機会をつくりたい」という思いから開催された。

展覧会の主題は「調和を求めぬ眼差しが照らす、内なる真実」。会場では、絵画8点を中心に、ドローイングやオリジナルの着物作品、これまで制作してきた楽曲の未公開音源や、本展のために作られた新曲も公開された。
また、会期中には、京都府知事の西脇隆俊や、バンド・Novelbrightのボーカル、竹中雄大とのトークイベントも実施。イベントで作曲と油絵の制作に関する違いを聞かれた池内は、次のように語る。
「作曲と油絵は、どちらも“創造”という同じ源から生まれる行為ですが、実際に取り出しているエネルギーはまったく違う層にあります。私は音楽を作るとき、「時間」という川の上に意識を浮かべています。音は一瞬ごとに生まれては消え、感情の波をそのまま流れに託す。作曲では右脳の深いところにある“流動的な感性”を使っていて、そこには身体ごと没入するような疲れ方があります。
いっぽう、油絵を描くときは時間が止まるのです。キャンバスの前では、瞬間を積み重ねて永遠の形に変えていく感覚があって、使っている右脳の場所もまるで別。より静かで、深く沈むような意識の層です。色や光を“固定するための感性”を使うので、疲れ方もまったく異なり、音楽とは別種の精神の引き出しが開く感覚があります。同じ“創作”でも、流れるものを掬い上げるのか、止めてかたちにするのか。その違いが、私の脳の使い方をも変えてしまうんです」
本展は、多面的なアーティストとして活動を行ってきた池内の、画家としての出発点を鑑賞者と共有するような機会となった。