
井田幸昌 Truth - S - 2026 油彩、キャンバス 130.2×175.2cm
天王洲エリアに新たなアート発信拠点として始動する「Gallery 地動説」のこけら落とし展として、画家・現代美術家の井田幸昌による個展「ポイエシスの彼方」が開催される。井田の創作における新たな転機となる、ヌードをテーマにした最新作シリーズの国内初展示だ。会期は8月4日から9月26日まで。

井田は1990年鳥取県生まれ。これまで家族や友人、著名人などを描く「Portrait」シリーズを通して、「人間の実存」と向き合ってきた。近年は、絵画を「壊す(抽象化)」ことと「再構築する」という行為を反復し、自らの表現の根源を問い直している。その背景には、戦争や身近な人の死、そして自身が海外で受けた差別的な経験がある。国籍や民族、文化的背景によって人と人とのあいだに境界線が引かれてしまう現実に向き合いながら、井田がたどり着いたのは、あらゆる属性を取り払い「人間そのもの」を見つめ直すという視点だった。展覧会のタイトルになっている「ポイエシス」は、古代ギリシャ語で「無から有を生み出す行為」を意味する言葉。本展では、イメージの脱構築と再創造を繰り返してきた井田の、新たな挑戦が立ち現れる。
今回新たに天王洲にオープンした「Gallery 地動説」は、既存の価値観や美術史の常識にとらわれず、世界の見方を変える新しい視点と出会う場となる。ディレクターの沓名美和は、「井田の作品は、単なる絵画ではなく、時間や記憶、存在そのものを刻み込む行為だ。過去と現在をつなぎ、見る者の記憶や感情を呼び起こす。私たちが当たり前だと信じている世界の見え方を揺さぶり、新たな視点へと導いていく」とコメントしている。

本展にあたり、井田は次のようにコメントを寄せた。「いま、デバイスやSNSの発達によって、誰もがポートレートを生み出し、ポートレート作家になれる時代が訪れました。80億を超える人々が生きるこの世界で、『人を描く』という行為は、かつてとはまったく違う意味を持ち始めています。だからこそ私は、身体を克明に写し取ることへと立ち返りました。目の前に存在するひとりの人間と向き合い、その時間や呼吸、偶然の出会いを描き留めたいと思ったのです」