3年ぶり3回目の個展となります今回は、日本未発表の映像「Downside Up」,「News from the Near Future」および写真作品「West Pier」シリーズを展示いたします。
インドネシアに生まれ、オランダを拠点に活躍するフィオナ・タンは、反中国人暴動によって離散した自身の家族を追うドキュメンタリー・フィルム「May You Live in Interesting Times」(1997)をはじめ、ヨーロッパで高い評価を受けています。彼女が作品を通じてアイデンティティを追求するのは、中国系インドネシア人とオーストラリア人の両親をもち、東洋と西洋で育った背景があります。しばしば既存の記録フィルム素材を作品に取入れ、ドキュメンタリーとフィクションの間を行き来するような表現は、まるで自分自身の文化的・歴史的ルーツを辿っているようでもあります。
夕暮れ時に通りを行き交う人々が上下逆さに映し出され、いつしか人々の影が人間へ、人間は影へと代わっていく「Downside Up」(2002)。海岸に佇むヴィクトリア風の男女、海水浴を楽しむ人々、汽笛をならす蒸気船、ヨーロッパ河川の氾濫など、水に関連した様々な記録映像や音源が大画面で押し寄せる「News from the Near Future」(2003)。彼女が元来関心を寄せている時間や記憶といったテーマが、独自の映像言語で語られています。