2014年夏真っ盛りの午後、ふと思い立ち収納棚の片付けを始めた。家族写真のアルバムをしばらくぶりに引っぱり出した時に手が止まった。アルバムは亡父母のポートレート・新婚旅行から始まっていた。キャビネほどに引き伸ばされたもの、手札判やもっと小さなプリント。ブローニー判で撮影されていた。時とともに家族が増え、カラー写真が加わり、ライカ判が中心となっていく。1990年夏、仮住いへの引越しの準備。1930年代製の「イコンタシックス」は蛇腹に破れがあり、カビが生えていた。なんの躊躇いもなくあっさりと廃棄した。我が家に再び同じ型式のイコンタがやってきたのは1990年代の終わりだった。私が写真に興味を持ち始め、中古カメラ屋巡りをしていた時に銀座で出会った。家に持ち帰り父に見せた時、目が笑っていた。
風がチョッと寒く感じられるようになった初冬。蛇腹カメラを携え、街に出た。首には父の形見のウールのマフラーを巻いて。むき出しの写真機は冷たかったが、はしゃいでいるようでもあった。父との思い出の場、あるいはゆかりの地へと足が向くことが多くなっていった。まるで写真機が道案内をしてくれているように。本展会期中に十七回忌の祥月命日を迎える亡き父へ、感謝と鎮魂の祈りを込めて。- 宮内雅之
会場: Roonee 247 Fine Arts / Room1