本展のタイトルは、アンディ・ウォーホルの言葉 “When you do something exactly wrong, you always turn up something.(何かを的確に間違えると、いつも何かしら発見がある)”に由来しています。キャンベルにとってこの言葉は作品が完成した時、つまりʻ的確に間違っているʼ瞬間を意味しています。例えば気泡緩衝材が分厚く、それらしい空気感を全く感じられなかったり、段ボールが妙に薄かったり、OPPテープの横を通り過ぎても揺らがないことに気付いた時、それら一つ一つの素材が見慣れているものから全く見知らぬものへと突如変化します。それまでʻ正しいʼと思えていたものが、違和感を覚えた瞬間からʻ間違ったものʼとして認識されるのです。
キャンベルは本展をきっかけに初めてウォーホルを題材として迎え入れましたが、これは彼女の芸術実践における美術史的な焦点がモダニズムからポップアートへと移った証拠です。同時に、キャンベルによるʻ再現の手段と意味ʼについてのより深い考察の反映でもあり、ウォーホルや他のアーティストたちがそのテーマに取り組んできた歴史に対して彼女がどう応えているかを提示しています。そのため、本展の展示作品は半数近くウォーホル作品の再現で占められています。原作と同じ技法で描かれた「Small Torn Campbellʼs Soup Can (Pepper Pot) with Masking Tape」(2020年)では、破れたラベルに塗られた典型的な赤い絵具はキャンベルの作り出すマスキングテープの上を覆っており、そのマスキングテープは一部が剝がれかけています。一方で、より立体的な「Brillo Soap Pads Box Flattened」(2021年)は、キャンベル自身が開発した新しい鋳造法により、原作の形態を忠実に再現しています。キャンベルがこれまで、フランク・ステラの「ブラック・ペインティング」シリーズや、本展でも展示されるヨゼフ・アルバースの「正方形へのオマージュ」シリーズなど、各アーティストを代表する重要な作品やシリーズを取り扱ってきたことと同様に、商業的および文化的な社会意識のもと、ウォーホルの最も有名な作品をあえて選び、再現しているのです。