終了した展覧会・イベントです

竹内孝和 「私はあなた、あなたは私」

KOMAGOME1-14cas
終了しました

アーティスト

竹内孝和
生物の発生はとても神秘的な生命現象である。アフリカで生まれたとされている我々の祖先ホモサピエンスの誕生や更に遡った生命の起源は未だに解明されていない。しかし、世界各地の神話や宗教に共通して「人は土から生まれた」といった伝承が散見される。例えば“旧約聖書―創世記2章7節”には「神である主は、土地のちりで人を形造り、その鼻に息を吹き込まれた。そこで、人は、生きものとなった。」、またオーストラリアの先住民アボリジニーはこう語っている「すべては大地からやってくる。言葉、人間、エミュー、カンガルー、植物。それが法だ。」と。更に、仏教学者の鈴木大拙は「大地と自分は一つものである。大地の底は、自分の存在の底である。大地は自分である。」と記している。また、日本語には「母国」や「母なる大地」という言葉があるが、私が幾年か過ごしたドイツにも“Mutterboden”や“Mutter Erde”があり、それらは「母なる大地」と同じ意味である。大地・土からすべてのものが誕生し育まれるという認識は全人類が持つ共通項であり、人間と土の関わりの深さが見て取れる。
ホモサピエンスが誕生した当時、彼らは大地に根を張った植物の実や果実、そして土中のイモや根を食べ、また山肌を削り穴を掘り風雨をしのぐことで命を繋いできた。太古の人は私たちよりも遥かに大地と密接なかかわりがあり、狩猟採集民族から農耕民族に生活スタイルが移行した後も綿々とその歴史が引き継がれている。私たちは今も土の中で育まれた穀物や野菜を食し生かされているが、コンクリートやアスファルトに覆われた世界に生きていると、自身と土との関係についてもあえて注視することも無い。
遠い祖先の生活では、猛獣に襲われる危険が常にあり、毒性植物を食べて命を落とす可能性もある状況の中で生き、自然界の動植物、気候、天体など取り巻くすべての状況を観察し把握することに努めていたであろう。一方、様々な機器に依存している現代人が獲得できる情報量は莫大なものになるが、個人ひとりひとりが持つ有益な情報は太古の人の方が多く持っていたかもしれない。そして、人と人との相互理解がなされ、周りの環境や物との距離も近く、濃密な中で他の人々と協力・共労せずには生き抜くことはできなかったであろう。また、日々の生活に創造性が必要とされ、彼らは私たちよりもラジカルな生活をしていたのではないかと想像する。

2020‐21年と人類はウイルスと闘っているが、ウイルスやバクテリアといった微生物は人類以前から地球に存在していた。そして、私たちの体内にも微生物が存在し、彼らがいないと私たちは生きてはいけないほどに共存・共栄している。土の中には幾億というバクテリアが生息しており、素手で土と戯れ象ることは血や肉によることに等しいと感じる。そして、祖先が行ってきたであろう他者との直接的な関係性を持つ行為に近い様に思える。

この度は、土を用いた作品と共に、金属を素材とした高さ2mを越える彫刻。そして、石器の元となった黒曜石と組成が近いガラスを用いた作品も展示予定である。

スケジュール

2021年5月8日(土)〜2021年5月23日(日)

開館情報

休館日
イベントにより異なる
備考
月曜日は休廊、開廊時間 11:00~19:00
入場料無料
会場KOMAGOME1-14cas
https://komagome1-14cas.tumblr.com
住所 〒170-0003 東京都豊島区駒込1-14-6 東京スタデオ1F
アクセス東京メトロ南北線駒込駅3番出口より徒歩2分、JR山手線駒込駅南口より徒歩2分
電話番号03-3946-3481
関連画像

各画像をタップすると拡大表示します