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[画像: 浜口陽三《17のさくらんぼ》1968年]

浜口陽三 「終わらない情景」

武蔵野市立吉祥寺美術館
終了しました

アーティスト

浜口陽三
「題というのも、やっぱり大事だと思うんですよ」と浜口陽三はいいます。浜口の作品には、《壺ととうがらし》《黒いさくらんぼ》《17のさくらんぼ》など、モチーフをそのまま普通名詞によって示した画題が付されています。固有性を持たない画題は、描かれたモチーフを特定の個として完結させません。さらにいえば、モチーフが普遍的主題として立ちあがる素因ともなっています。

美術評論家の中原佑介は、浜口の作品についてこう語っています。「実際に作品を見てみると、案外陰影もついていなくて、むしろフラットというか厚みのない描き方をされています。全然リアリズム重視ということではない。(中略)むしろ陰影をつけないことで空間表現が可能になっているということがいえるかもしれません」。写実的な陰影描写は、モチーフが置かれている場や状況、周辺事象とのかかわりなどを具体的に指し示し、現実世界における個別性をあきらかにしているともいえます。しかし、浜口が描くモチーフは、現実世界との関わりから離れ、深遠な空間に浮かびあがるように表現されています。一個の現実存在の描写から、終わるということのない情景―すなわち普遍へと、昇華しているのです。またこのことは、彼の画題のありようとも結びつくのではないでしょうか。

浜口のパートナーであった銅版画家・南桂子も、エッチングやドライポイントを主たる技法とし、陰影を排した線描によって、ひろがりをもつ詩的な空間をつくりだしています。画面と呼応するように置かれた画題も、浜口を彷彿させます。

今回は、浜口陽三作品16点と南桂子作品6点、あわせて22点をご覧いただきます。もちいる技法は異なるものの、ふたりの画面には通底するものが存在します。原版に刻まれている精緻な描線もみくらべつつ、ふたりがあらわす“終わらない情景”のうちに、心を置いてみてください。閉塞感に満ちた現況のなかで、何かをすくいあげることができるかもしれません。

スケジュール

2021年10月16日(土)〜2022年2月27日(日)

開館情報

時間
10:0019:30
休館日
毎月最終水曜日・年末年始は休館
備考
10月27日、11月25日・11月29日~12月1日・12月15日~2022年1月7日・1月26日・2月16日・2月24日は休館
入場料[常設展] 一般 100円 [企画展] 一般 300円、高校生・中学生 100円 [共通] 小学生以下・65歳以上・障害者手帳提示 無料
会場武蔵野市立吉祥寺美術館
https://www.musashino.or.jp/museum/
住所〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-16 FFビル7階
アクセスJR中央線・総武線・京王井の頭線吉祥寺駅北口より徒歩3分
電話番号0422-22-0385
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