山本修路 「A natural history around trees」

HARUKAITO by island

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山本修路(Shuji Yamamoto )は1979年東京都⽣まれ。2005年多摩美術⼤学卒業。現在は埼玉県越谷市と青森県十和田市を拠点に活動してる。山本は庭師としてのバックグラウンドを持ち、「大自然と人間の関わり」をテーマに日本各地を旅し、フィールドワークを行う。米作りから携わる酒造り、メープルシロップ作り、それらを基にした林業についての考察など、その活動は多岐に渡る。山本のテーマにある「大自然」は、わかりやすい二項対立として「人間」と併置される「自然」ではない。それは、和辻哲郎が言う「我々はすべていずれかの土地に住んでいる。従ってその土地の自然環境が、我々の欲すると否とにかかわらず、我々を「取り巻いて」いる」という意味合いの、自然/人間が一体となった「環境」を意図している。そしてその「人間」の主語は極めて小さく、「山本修路」なのである。

本展『樹木学 A Natural History Around Trees』は、2018年、BLOCH HOUSEにて開催された『博物学 A natural history 』に連続している。『博物学』では、旅を主軸とした山本の見聞を集積したものであった。そこには山本が毎冬メープルシロップを採取する「イタヤカエデ」の葉のドローイング、あるいは山本の集めた書籍(自然史と人文学が交差するようなもの)までが雑多に陳列されていた。「すべての活動は大自然と人間との関わりを角度や距離を変えて体験し見るための取り組み」と山本が語るように、スペシフィックに何かを主眼に置いたものではなく、「博物」(広範的なもの、こと)であることが明示されていた。それに対して今回の『樹木学』は木々という大自然における重要な、一つのアクターに焦点がある。

本展タイトル(邦題、英題ともに)『樹木学 A Natural History Around Trees』はピーター・トーマスによる『樹木学 Trees: Their Natural History 』から着想を得ている。本書は生物学や生態学がこれまでに蓄積した、樹木についての知見がわかりやすく総括されている。著者は序文にて「樹木の本をなぜ書くのか。樹木については、すでにたくさんのことが知られている。しかしそれは世界各国の多種多様な雑誌や書物に記されたもので、あちらこちらに分散している。樹木の講義を行いながら、いつもこのことにフラストレーションを感じていた。」(ピーター・トーマス著、熊崎実、浅川澄彦、須藤彰司訳、『樹木学』、築地書館、2001年)と記している。つまりトーマスの『樹木学』はグローバルで網羅的な、樹木に関する自然史である。一方、本展『樹木学 A Natural History Around Trees』は英題の頭文字が『the』ではなく『a』であるように『ある一つ』の樹木の自然史である。そう、つまり山本修路が紡ぐ一つの樹木の物語なのだ。

この物語、この小史の実現のため、本展はオイルペインティングを中心に木版画、フォトブック、ラジオ、インスタレーションと領域横断的に展開される。それらの作品はどれも山本と自然(木々)の関わりを見せてくれる。本展の中核をなすオイルペインティングは木々の形を緻密に描き出している。そこには葉や花などはなく、細部まで幹や枝のみである。絵画というメディウムにおいて、単一の樹木が主題となることは少なく、あくまでも風景の一部か、あるいは四季を彩るデフォルメされた生命体として登場するのが大半ではないだろうか。一方、山本の描く樹木は、科学者的な視点から描き出される。例えば「この樹木は、このような特性があるから、ここから枝を広げるのだ」というように。それら絵画には、山本が長年観察し続けた十和田の雪景に佇むブナ、ミズナラそしてイタヤカエデが立ち現れる。加えて本展では、長野県軽井沢、「人・自然・人工物の新たな新陳代謝」をコンセプトに暮らしの実験場「TŌGE (トウゲ)」での滞在制作の成果であるカラマツ材の版画作品、山本が双眼鏡を通して旅先の風景を撮影した『風景を読む』(2015−)シリーズのフォトブック(八木 幤二郎によるデザイン)、アーティストと研究者のアイデアを融合し、生態学的問題の探求と人間と自然(木)との関係を紐解くことを目的としたラジオ番組などが展開される。

そして最後にはウッドデッキが会場全体を覆う。この国産木材を用いた造作物には山本のエッセンスが詰まっている。山本はウッドデッキと同様に、今まで国産木材を使用して東屋や小屋などの造作物を制作してきた。(またBLOCK HOUSE の屋上にも山本の東屋『皐月庵』がある。)私たちは何気なく木の製品を使用しているが、それだけ木材が、木々が私たちの生活を取り巻いているということでもある。自然と人間との歴史と同じくして、木と人間との歴史は深遠だ。山本は日本各地を旅し、その木材の歴史をリサーチし、フィールドワークを重ねている。その膨大なリサーチをもとに山本はあえて、ホームセンターで購入が可能な国産材のみで、東屋や造作物を作る。一般流通している木材の使用は人間と自然との関係史の現在を表象する。そして過剰な労力を要する輸入材ではなく、国産材を使うことが、地球規模の森林伐採などに対して、一個人が抗う最小で、最善の行為であることを山本は知っている。昨今、持続可能性やエコロジーを思考する潮流があるが、山本に偽善的かつ頭でっかちなエコロジスト的思考はなく、森林生態学的見地をもちながら、実直に一個人として自然と接し生きている。あまりにも膨大で煩雑とした「人間と自然の関係性」や「エコロジー」について考える際、山本のこの姿勢は一つの人間のあり方を示してるのではないだろうか。

メディア

スケジュール

2021年07月16日 ~ 2021年08月09日
開廊時間 13:00〜19:00、月曜日・火曜日・水曜日は休廊、8月9日は開廊

アーティスト

山本修路

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