The Container本展はビリー・モンクの作品をアジアで初めて展覧する機会だ(香港でもパートナーのブギー・ウギー・フォトグラフィと共に同展を発表済)。写真のセレクションはとてもユニークである。写真はそれぞれ1982年のマーケット・ギャラリーで展覧されたオリジナル・シリーズのもの、2019年の新たなビリー・モンク・コレクションのもの、世界中で初めてショーケースされるものの、三種類から成る。
セレクションはアジアのギャラリー客向けに選出されていて、カタコンベの多種多様な客入りを垣間見えさせる、ケープタウンを頻繁に訪れた日本人と香港人の船乗りやアジアの観光客の写真を多く紹介する。自身の肌色や、ゲイ、トランスジェンダーの女性、売春婦、道楽者など、不評判な社会的集団と関わりがあるだけで行動が制限された、南アフリカのアパルトヘイト時代において本当のサブカルチャーがどのようなものであったかを知る貴重な機会である。多様な人々が肩をもみあわせ、どんなことも許され、誰もがウェルカムだった寛容な社会空間が創られていたことを、モンクの写真は全て写し出している。いわゆる典型的な日本人サラリーマンが夜遅くのカラオケに手を伸ばして現地の女性と抱き合っている様子や、山手線の終電時の電車かのようにベンチの上で酔いつぶれている様子を、取り散らかった写真の混沌の中に見つけるのも実に滑稽だ。
「アパルトヘイト下での抵抗と堕落」では私たちは抑圧下の間にあった至福のひとときを垣間見ることができると同時に、既知のこともまた教え込まれるのである。それはつまり、人間の魂に愛と寛容は、どんな権力によって敷かれた差別的規則や制限よりも、強いということを。
[関連イベント]
「A Shot in the Dark」(2019)上映会&トーク
トーク出演:クレイグ・キャメロン=マッキントッシュ(ビリー・モンク・コレクション ディレクター)
日時: 10月25日(土) 20:30〜22:00
要予約
※詳細はホームページにてご確認ください。