チン・ペイイ(陳珮怡 CHEN Pei Yi)は、1984年台湾生まれ。2011年に東海大学大学院美術研究専攻(台湾)を修了。在学中より台湾で数々の展覧会に出品し、2017年からは日本でも作品を発表しています。日本と台湾の双方で高い評価を得ながら、着実に活動の幅を広げています。チン・ペイイは、岩絵具や膠を用いる膠彩(こうさい)画の技法を基盤に、身近な存在である猫や室内の情景を描いています。作品に登場する猫たちは、チン・ペイイと暮らす猫たちをモデルとしています。その自然な仕草や表情からは、日々の生活をともにするなかで育まれた深い信頼関係が感じられます。また、細やかな筆致によって描き出される毛並みは、柔らかさや温もりまで伝わるような質感を備えています。その姿には、単なる愛らしさだけではなく、人間の感情や社会を映し出すようなユーモアや機知も込められています。
また、猫とともに繰り返し描かれる絨毯は、チン・ペイイにとって「安心感を象徴するもの」です。岩絵具の盛り上げなどの技法を用いて緻密に表現された絨毯の質感は、画面に奥行きと豊かな触覚性をもたらし、穏やかな室内空間へと鑑賞者を誘います。こうした身近なモチーフを丁寧に見つめながら、チン・ペイイは、日本画をはじめとする東洋の絵画表現や歴史的な美術、染織文化などから得た視覚的要素に加え、西洋絵画にみられる立体感や質感、東洋古典絵画の表現など、多様な美意識を一つの画面の中に調和させることで、独自の表現へと発展させています。古典的な技法や文化的背景を踏まえながら、現代の日常風景と結びつけることで、伝統と現代、台湾と日本、さらには異なる文化や時代をつなぐ豊かなイメージを生み出しています。本展は、日本国内の美術館では初となるチン・ペイイの個展です。国内外から集めた約30点に加え、本展のために制作された新作も紹介します。猫たちと過ごす日常のひとときを見つめ、繊細な筆致と豊かな質感によって描き出された作品の数々を通して、穏やかで親密な時間をご高覧いただければ幸いです。
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