アートやデザイン、アートディレクションなど幅広い領域で制作を行ってきた渡辺は、2017年から手がけているFUJI ROCK FESTIVALのメインビジュアルでも知られています。活動は横断的でありつつも、動植物や風景を平面的でインパクトのある形と鮮やかな色彩で表現するスタイルには、一目でそれと分かる独自性があります。明快な色と形で自然のモチーフを描いてきた渡辺にとって、命や精神を吹き込むこと、動きを与えることを意味する“animate”という言葉は活動に通底するテーマと言えるかもしれません。単なる素材から感覚に訴える作品を生み出す芸術家の行為は歴史の中でしばしば、自然に生命を吹き込む神の創造行為になぞらえられてきました。しかし、“animate”というテーマについて渡辺が関心を抱いているのは、何かが動きはじめ、そこに生命感が生まれることそれ自体だといいます。それゆえ、本展においてこの言葉は、生命を一方向的に与える存在というよりも、作家と作品、作品と鑑賞者の間に生まれる多方向的な関係性を指すものとして理解できるでしょう。本展の作品で渡辺は、複数の色面や形、モチーフを一枚の画面の中に配置し、全体を一つのビジュアルとして構成することを試みています。イメージ同士は画面の中で混じり合い、時としてその正体や境界は曖昧になっています。うねる線は山の稜線にも、水や大気の流れにも、あるいは装飾的なパターンのようにも見えます。“animate”と語源を同じくする別の言葉、アニミズム(animism)は、人間や動物、物や自然現象に至るまであらゆるものに魂が宿っているとする考え方を意味します。この意味で、有機的なものと無機的なもの、具象と抽象が混じり合った渡辺の作品から立ち現れてくるのは、アニマ—魂や生命—そのものの感覚と言えるかもしれません。色と形の構成から生命の感覚が立ち上がり、見る人に向かって開かれてゆく、ダイナミックな渡辺の作品世界を会場にてぜひご高覧ください。
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