この度、ギャラリー石榴では、弊廊での谷口歩の初個展「線と脈 Lines and a Vein」を開催いたします。谷口は薄紙が巻かれた針金や、手芸用のダルマ家庭糸などを用いて立体作品の制作を続けてきました。作家は「編む」「結ぶ」「絡める」といった、漢字の部首でいう「糸へん」の行為の反復によって、ときに動植物の器官を思わせるような、有機的なかたちを生み出しています。
本展は近年発表を続けてきた「wireworks」に加え、既製糸ひと巻き分を作品の一単位と定めたシリーズ「itomaki」と「糸のドローイング」で構成されます。いずれも作家が長い年月をかけて、並行して展開してきた作品群です。設計図をひかないままスタートし、出現したかたちとの対話を重ねながら、さらに線を操っていくという制作行為は、立体を生み出すものでありながら、紙に描くドローイングの身体性や即興性との近さを感じさせます。メディウムの相違をこえて、谷口の指先から立ち現れるかたちは、拡張された感覚器官としての皮膚のようでもあり、また世界に触れようと伸ばされる触手のようでもあります。
作家のアトリエに存在する、たくさんの「制作途中」の作品が示すように、自身にとって制作とは本来、終わりが決められないものであると谷口は言います。本展のタイトル「線と脈」の「線」とは、針金や糸などの線状のマテリアルを喚起させると同時に、本来終わりのない制作の流れから切り出された、一単位としての作品を暗示する言葉でもあります。そしてこの度の展示が、個々の作品という単位をこえて、谷口の制作全体にはりめぐる「脈」に触れ、世界とみずみずしく接触する作法を感じる機会となれば幸いです。展覧会は青山会場のあと、松本へ巡回いたします。
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