東京芸術劇場空間に散りばめられたスクリーンから重なり響く、証言、再現、演奏、漫才などさまざまな声や身振り。それらに取り囲まれた観客は、第二次世界大戦が、ひとつの過ぎ去った出来事ではないことを身体的に体感していく。
那覇出身の映像作家・山城知佳子は、写真やビデオ、パフォーマンスを駆使し、沖縄の歴史や政治、文化を視覚的に探求してきた。米軍基地敷地内の黙認耕作地を舞台のひとつとする『肉屋の女』(2012)や、戦争体験を語る老人の映像を山城自身の顔に映写し、その声を自身の身体を通して響かせようと試みる『あなたの声は私の喉を通った』(2009)の鮮烈なイメージは話題をさらった。今作は、これまでの山城作品に通底する関心や実践とも深く響き合っている。
植民地化や激しい地上戦を経験した沖縄は、現在に至るまで複雑な政治的・社会的状況を抱え続けている。本作は、その歴史の層を、異なる語りや身体、さらには語られない〈沈黙〉までも含めて並置し提示する。2023年から2025年にかけて撮影された映像には、沖縄戦後史の記憶をその身に刻む平良修牧師、ジャズシンガー齋藤悌子、ミュージシャン喜納昌吉、東京大空襲証言者の亀谷敏子、そして山城の父である小説家・山城達雄が、沖縄移民の子として戦前・戦中を過ごした南洋パラオの風景とともに映し出される。
内容と形式の両面で歴史と記憶の多層性を表現し、比類なき強度を獲得している本作は、2025年にアーティゾン美術館でインスタレーションとして発表された。その後、戦後80年特別企画として那覇文化芸術劇場なはーとで劇場空間にあわせ再構成され、今回の「秋の隕石2026東京」では、さらに東京芸術劇場に応答するかたちで構成を更新する。本バージョンでは観客は移動しながら本作を鑑賞する。上演が進むに従って観客の立場や感覚は変化し、劇場空間の中には、複数の記憶や声、身体が重なり合う経験が立ち現れる。
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