「美術の中のかたち—手で見る造形」展は、作品に触れて鑑賞することができる展覧会です。平成元(1989)年から続くこのシリーズは、目の見えない人、見えにくい人に美術館で作品を鑑賞する機会を広げることを目的としてはじまり、同時に、視覚中心になりがちな鑑賞のあり方そのものを問い直す場ともなってきました。36回目となる今回は、鉄を素材に制作を行う彫刻家・青木野枝(1958 -)を出展作家に迎えて開催します。青木の彫刻は、工業用の鉄板から溶断したパーツを溶接して組み上げるシンプルな工程によってつくられます。水や光、大気中の粒子といった、目には映らないけれどもわたしたちのまわりに確かに存在し、絶えず流れ、変化し続けるものに関心を向ける青木にとって、素材である鉄もまた不変のものではありません。溶断によって赤く溶けていく鉄は、冷える過程で内部に光を宿します。それらをつなぎあわせることで生まれる彫刻は、表面の硬質さとはうらはらに、軽やかに空間へと広がり、生命や自然のなかにある微細な動きの気配を感じさせます。阪神・淡路大震災から30年を迎えた2025年、当館屋外4階「風のデッキ」に、青木の彫刻作品《Offering/ Hyogo》が設置されました。海と山の間にあって、風が吹き抜け、光が移ろうその場所の真下に位置する3階展示室2を会場に、本展にあわせて制作された新作を展示します。
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