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[画像: Gabriel Rico, The second cause is meant to be an explanation of the first (Páramo, The oak tree), 2022. Canvas with embroidered hand-painted yard (Traditional huichol technique), 100 x 150 x 5 cm | 39 3/8 x 59 1/16 x 1 15/16 inch. Courtesy of the artist and Perrotin.]

ガブリエル・リコ 「THE PROPAGATION OF TEURÁRI」

ギャラリーペロタン東京
終了しました

アーティスト

ガブリエル・リコ
メキシコ・グアダラハラ出身のアーティスト、ガブリエル・リコによる最新の作品群は、ファースト・ネーション(北米先住民族)や先住民がもつ非西洋的な知識を融合することで、自然とのより強固な繋がりの構築を図っています。リコはファウンド・オブジェの収集および構成、新しいオブジェの創作、メキシコのウイチョル族との広範なコラボレーションという独自手法を用いて、物理学・幾何学・論理学・精神性がいかにして私たちの存在と潜在性とのバランスをとるのか、そのオルタナティブな認識を構築しているのです。

本展「The Propogation of Teurári」(テウラリの伝播)は、リコが過去10年にわたりコラボレーションを行なってきた先住民のグループに捧げるものです。《The second cause is meant to be an explanation of the first (Páramo, The oak tree)》に見られるように、作品には先住民の伝統的な職人技であるニエリカ(毛糸絵)の技法や、チャキラ(ガラスビーズ)が活用されています。こうした技法を用いることで民俗学的な創造プロセスを促進するとともに、鹿や自然要素を神聖なものとして扱う普遍的で新しい構図をウィシャリカの職人たちの手で作り出すことを可能にしています。テウラリとは、鹿の姿をした神の化身を意味します。先住民の自然に基づく信仰は、保護的・進化的な観点から、リコをはじめとする多くの人々に私たち人間と地球との関係を再考するきっかけを与えているでしょう。この視点は職人たちの信念体系や、リコが思い描く人類救済への道をも反映しています。

さらに深く掘り下げると、先住民の信仰を通した自然の認識には、自然の動きや幾何学的な形がもつ繊細さのみに備わっているリズム・バランス・調和が関わっています。《VII from the series - The taste of superlative and the admirable holiness》では、鑑賞者の通過によって生じる風が、吊り下げられた金箔をほんの一瞬はためかせ、人間と作品の間にある目に見えない原子の触覚的な繋がりを感じさせます。さらに、天空を象徴し、希望の光の比喩であるライトを並列することで、不安定な状態の天空のような空間を創出しています。同作の対称性は、自然界に見られるバランス感覚や形をさらに深めた緻密な計算に基づく作品《No podemos ver el interior del soldirectamente (pentágonoymáscara)》の陰と陽のように心地良いものです。

対象物(太陽)・機能(太陽が地球上の生命を支えていること)・論理(幾何学における数学と物理的機能)・解釈(象徴性と芸術的表現)の繋がりは、私たちが見るものと表現するものの間に共生関係を構築します。リコは自然界の機能への理解を示しながら、その消費のされ方に関する人類の一般的な誤認識にも協調しています。また、リコは自然幾何学における形状と従来の期待を改変することで、私たちが自然を拒絶する不合理と、不合理な表現様式としての芸術の活用についても喚起しているでしょう。このことは、太陽を長方形に変え、天体物理学上の構成要素である光球(黄色)とスピキュール(オレンジ色)を強調した作品《If the Sun had been reduced in size because of the space between I and Us, much more would it have lost its color (glass square)》に示されています。

こうしたプロセスと並行して、リコは無形のものを有形のものへと変換していきます。シリーズ《Metawoman》では、絶えず進化を遂げながら偏在する女性的アイデンティティを、雲や蒸気という空気的な物性を通して具象化しています。いたる所に存在する星雲状の形は、私たちの存在を自然要素やそれらに人間が与える直接的な影響と、より精神的な繋がりを持って絶えず結びつけます。雲は天界へと通じる門なのです。

無形のものへのアプローチと同様に、リコは人間と自然を繋ぐ線上にある有形性の進化を示し、現在の操作された物質を人類が成し遂げうる不確かな未来へと橋渡しています。一本の枝がネオン・真鍮・石を操るインスピレーションとなり、人工と天然の素材による共生を生み出すとともに、自然に対する権威と力にまつわる昨今の状況を正当化するのです。リコは「現代社会が自然との繋がりを取り戻し、私たちの行動から私たち自身を救済するすべを模索しているさまを示しています」と説明します。

人間が自然へと向かう贅沢な行為として、リコは地上から天空へと舞い上がり、宇宙という無定形のアイデンティティへと飛び込んでいきます。地球上での私たちと自然との繋がりは、科学的・論理的にも、この宇宙を理解するためのごく一要素に過ぎません。より「遥か彼方」へと繋がる可能性は、私たち人類が最も高度な知能を持つ種として不動の地位を得ることへの飽くなき欲求をあらわにしています。かのハッブル宇宙望遠鏡の誕生により、遥か彼方の地や星雲状の星くずの酔いしれるような美しさを捉えることができるようになりました。それは、私たちが備えた「見る力」を裏付けるものです。

《To compound the small differences VII》では、熟練の職人であるヘリベルト・カストロ・モントヤ(ウィシャリカでは通称Tikitemai)にハッブルの画像を提供し、銀河系やその先で発見されたあいまいな形を想像・または具体化することを依頼しています。これらの画像をチャキラによって再解釈することで、宇宙的なもののアイデンティティを親しみやすい姿へと変容させ、この世のものとは思えない自然界の感覚と私たちをより深く結びつけます。職人の繊細な妙技は、自然を表現することへの関心や最重要性を象徴するとともに、先住民の知識が地球や宇宙との発展的な関係を持つことを強調しているでしょう。

《The second cause is meant to be an explanation of the first (Páramo, The oak tree)》に描かれた神々しい生物や自然界の物体を取り囲むグレーの空間は、単なる空白ではありません。むしろ、関心・信頼・可能性により、私たちのアイデンティティや行動と、地上・天上の自然界との果てなき繋がりや協調の機会を与えてくれる、想像のための空間なのです。

スケジュール

2023年5月12日(金)〜2023年6月24日(土)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttps://www.perrotin.com/exhibitions/gabriel_rico-the-propagation-of-teurari/9796
会場ギャラリーペロタン東京
住所〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F
アクセス都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅1a・1b出口より徒歩1分
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