終了した展覧会・イベントです
[画像: 萩原英雄 連作「二十世紀」《道徳の比重》1955年]

萩原英雄 「人間としてあること」

武蔵野市立吉祥寺美術館
終了しました

アーティスト

萩原英雄
「芸術には、その根底にヒューマニズムがなくてはならない」(*)と萩原英雄は言います。彼のいう「ヒューマニズム」とは「人を人たらしめる愛」を意味します。「人間存在の根源」たるヒューマニズムなくして芸術たりえないと、萩原は考えています。

萩原は、戦中戦後と度重なる不運に見舞われ、10年以上、その日の食事も覚束ないほどの苦しい生活を送りました。追い打ちをかけるように大病を背負い、1953年の夏からは診療所での療養を余儀なくされます。一時は医者もさじを投げるほどの病状だったといいますが、絵画に向かうつよい意志は、萩原を生へと引き戻しました。のみならず、彼は周囲も巻き込んで患者同士で絵画を楽しむ時間をもうけ、多くの患者たちが生きる意欲をとりもどすきっかけをつくりました。「困窮のどん底で、人の世の冷たさも、また、人の情も、こもごも味わうことになった」という萩原だからこそ、「ヒューマニズム」を心身において理解し、実践をすることができたのでしょう。

連作《二十世紀》は、萩原が診療所で療養生活を送っていた時期に制作したシリーズです。「創世記」「失楽園」は旧約聖書、「サロメ」は新約聖書から題材を得ています。「アポロンの火車」はギリシャ神話に登場するアポロンの二輪馬車でしょうか。「死の舞踏」や「悪魔の饗宴」は、疫病が大流行した中世以降、ヨーロッパにおいて繰り返し表現されてきた主題に着想を得ているようです。このほか、さまざまな局面において発現する人間のありようが、神話や寓話の登場人物などの姿をとって、象徴的に描きだされています。人間の愚かしいさまを鋭く突きながらも、批判や皮肉に終始せず、どこか生きることへの救いを感ずるのは、萩原の「ヒューマニズム」が根底に存するからに違いありません。

今回は、《二十世紀》シリーズに加え、診療所時代の作である《ひまわり》《風景》、そして独自の版画技法を駆使した1960年代の連作《鎧(よろ)える人》シリーズからの4点をあわせてご紹介します。画面から滲む萩原の「ヒューマニズム」は、私たちが人間としてあることの意味を、再認させてくれるはずです。

引用* 萩原英雄『美の遍路』(1996年、NHK出版)より

スケジュール

2024年3月7日(木)〜2024年5月26日(日)

開館情報

時間
10:0019:30
休館日
3月27日~4月12日、4月24日は休館
入場料https://www.musashino.or.jp/museum/1002006/1003367/1006135.html
会場武蔵野市立吉祥寺美術館
https://www.musashino.or.jp/museum/
住所〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-16 FFビル7階
アクセスJR中央線・総武線・京王井の頭線吉祥寺駅北口より徒歩3分
電話番号0422-22-0385
関連画像

各画像をタップすると拡大表示します

0件の投稿

すべて表示

まだコメントはありません