Atsuhiko Suematsu Galleryでは、池田巖による個展「風神 雷神」を開催いたします。すさまじい嵐により、引き裂かれ、よじれ、なぎ倒された竹藪から掘り起こされた竹の表情は、息を呑むようなエネルギーを発していた。
-Iwao Ikeda
竹という素材に向き合い続け、独自の造形を追求してきた池田巖(1940–)が今回題材としたのは、嵐によって倒れた竹です。2018年9月4日に上陸した台風21号は、京都府内の森林や竹林に大きな被害をもたらしました。京都西山の竹林でも、多くの竹が強風によって倒されました。池田にとっても、これほど大規模に竹が壊れ、倒れる光景を目にしたのは、長い竹との関わりの中で初めての経験でした。人の力では決して作ることのできない、歪み、ひしゃげ、ねじれた竹の姿。その形には、強大な自然の力が一瞬のうちに竹へ刻み込んだ痕跡が残されています。普通なら見過ごしてしまうその竹を、池田は立ち枯れにし、油抜きをしたあと、数年にわたり向き合い続け、切り取り、金や銀、漆を最小限に加えることで、作品として完成させました。
竹の曲がり、節、裂け目、表面の表情を生かしながら、どの方向から見ても一つの造形として成立することを求めて制作された本展の作品群。自然が偶然に生み出した形と、池田が長年培ってきた造形感覚と技術が交わることで、作品として成立しています。今回用いられているのは、亀甲竹です。亀甲竹は、中国南部原産の孟宗竹を起源とする珍しい変異種で、節の部分が亀の甲羅のように膨らむ独特の形状を持っています。その形は人為的に作ることができず、自然の変異によって生まれるものです。京都では古くから「京銘竹」の一つとして扱われ、茶室や建築、花入などに用いられてきました。自然の力によって変形した竹そのものを、造形として見ること。そして、その形を人の手によって必要以上に変えるのではなく、最小限の介入によって作品として成立させること。それは、竹を素材として扱い続けてきた池田巖が、あらためて自然と人間の関係を問い直す試みでもあります。
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