STANDING PINEでは、10月31日(土)よりジョエル・アンドリアノメアリソアの個展「Le palais des vents(風の宮殿)」を開催いたします。本展では、京都の着物を用いて制作され、2026年に岐阜県美術館で初公開された同名のテキスタイルシリーズを展示いたします。
アフリカに位置しながら、食や身体感覚といった層においてアジアとも接続するマダガスカルに根差し、パリにも拠点を置くアンドリアノメアリソアは、複雑に絡み合う歴史と文化を背景に、複数の領域を横断しながら、言葉では表し得ない抽象的な感情や記憶をすくい上げ、作品を生み出してきました。本作では、作家が京都で自ら選び抜き、収集した複数の着物をマダガスカルへと携え、裂いた布片を島に由来するイメージや地理の輪郭と継ぎ合わせていきます。長年にわたりテキスタイルを主軸に探究し、素材を「集めること」自体を制作の一部としてきた作家にとって、布は単なる支持体ではなく、手触りや労働、記憶を宿す媒体です。本シリーズにおいて作家は、二つの国と文化の痕跡が刻まれた異なる布を切断と接合、反復と層化によって新たな物語を立ち上げ、建築学を学んだ視点から、それらを「境界」ではなく「接続」として立体的な絵画へと編み直します。アンドリアノメアリソアは、着物のもつ簡素さと優雅さを取り入れながら、その線をひとすじ、ひとすじ織り重ねます。やがてそれらは、触れることのできないはずの感情に手ざわりを与え、目に見えない想いを物質としてこの世界に結晶させます。そこから立ち上がるのは、ひとつの大きな歴史であるHistoryと、無数の息づく物語としてのHistories。幾層にも重なり合う時間と記憶が、静かに、しかし確かに、空間の中に姿をあらわしていきます。本作が、私たちにとって遠い土地とそこに横たわる語られない連なりを改めて捉え直す機会となれば幸いです。
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