終了した展覧会・イベントです

田名網敬一 「世界を映す鏡 A Mirror of the World」

NANZUKA UNDERGROUND
終了しました

アーティスト

田名網敬一
この度NANZUKAは、NANZUKAUNDERGROUND、及び3110NZbyLDHkitchenの2会場において、田名網敬一の個展「世界を映す鏡」を開催致します。本展は、渋谷2丁目地下の当ギャラリー移転前最後の展覧会となった2020年「記憶の修築」、本年9月にNYのギャラリーVenusOverManhattanにおいて開催した「ManhattanUniverse」に続く新作個展になります。

2020年7月、コロナウィルス第一波と第二波の合間を縫って開催した「記憶の修築」において、田名網は自身の人生における記憶、知識と経験、そこから派生するイメージの増幅=夢といったテーマを回顧的に紡ぎました。それは、田名網の人生と時代の流れを共にしてきた日本の「戦後」という時代の残像を、個人史として色鮮やかに描き出した一連の曼荼羅図とでも呼ぶべきものでした。

その後の田名網の制作活動は、コロナ禍に見舞われた世界の中で、一変します。予定していた海外の展覧会や大学の講義、プロジェクトなどが止まり、締切やスケジュールに追われるという若い頃から60年以上も続いてきたルーティンから意図せず開放されたのです。そして、このことが、田名網の作品に意外な副産物を齎すことになりました。

「そんな怠惰な日々を過ごしていると、何かやらなければ、という思いが沸いてくる。こんな時期だからゆっくり休めばいいのにと思ったのだが、長年の習慣とは恐ろしいものである。そんな時、アトリエの床に放置していた埃だらけのキャンバスが目に止まった。1943年にピカソが描いた母子像(Mèreetenfant)を私が模写したものである。母に抱かれた子どもを鉄腕アトムに描きかえ、手塚治虫の「アトム展」に出品した作品なのだ。」

「私は、ピカソの母子像の模写に取り掛かった。気が付くと日も暮れ、薄暗くなったアトリエで私は夢中になって母子像に対峙していた。何も考えないで好きなものをただ写すというシンプルな行為がこんなにも楽しいとは思わなかったし、心身の安定にも繋がった。あれこれ試行錯誤することなく、色や形を写す単純な行程はかつて経験した写経に通ずるような気がする。制作意図も、締め切りも、発表予定も、何も決まっていないただ心を癒すために描くことが、こんなにも心の充足に繋がるのは、驚きであった。」

田名網は、画材屋でF6号のキャンバスを大量に購入し、これを日課として描くようになりました。これまでの3年近い期間の間に、既に400点を優に超すピカソ作品の模写を繰り返し制作するうちに、やがて田名網オリジナルのピカソシリーズが生まれてくるようになりました。田名網は、毎日4-5点のキャンバスを並べて創作を開始します。最初の1枚目はピカソの画集を横に観ながら見様見真似で描き、2枚目以降は自分の描いた作品をベースに、続く3枚目以降は直近の視覚的な記憶をたどりに自分で好きなようにアレンジして描いていきます。その結果、あたかも絵画版の伝言ゲームのように、少しずつ異なる作品が生まれていくのです。

田名網自身が「写経のようなもの」と語る、こうした創作活動は、決して幼稚なパクリ、盗用の類ではありません。ゴッホによる北斎や広重の模写などの例を挙げるまでもなく、自然の模倣に起源を持つ「アート」の歴史において、アーティストが他のアーティストの作品を模倣したという例は多々あります。科学者が他人の論文を参考にして研究や実験の深度を深めるように、あるいはアスリートがライバルの動きを研究するように、人は知的情報の殆どを模倣や伝聞を通して学んでいます。これは、アートにおいても同じで、模写を通してアーティストは表層的な情報に限らず、独特の視点、独自の技術、秘められた思考的な背景といった細部に至る情報を学ぶのです。例えば、田名網は模写を繰り返すことで、ある特定の作品において、ピカソが画面のどこから描き出したのか、どのように色を作っているのか、画面のどこのポイントをより強調して描こうとしていたのか、が理解できるようになったと語ります。

本展では、神宮前NANZUKAUNDERGROUND1Fスペースにおいて、こうして生まれたピカソのシリーズを300点程度、移動式販売スタンド(Kiosk)を模したインスタレーションを中心に展開します。また、ギャラリー2Fと3110NZでは、引き続き膨大なイメージの蓄積から生み出される新作のキャンバスペインティング、コラージュ作品、そして最新のアニメーション作品。

また、11月10日(水)から11月16日(水)の期間、渋谷PARCO2Fにあるスタジオ2G内、NANZUKA2Gにおいて、非営利目的海洋環境保護団体の「ParleyfortheOceans(パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ)」とのコラボーションによって制作された桐製の限定サーフボードを展示致します。本企画の利益は、Parleyより海洋環境の保護のために使用されます。

スケジュール

2022年11月12日(土)〜2022年12月25日(日)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、火曜日
入場料無料
展覧会URLhttps://nanzuka.com/ja/exhibitions/keiichi-tanaami-a-mirror-of-the-world/press-release
会場NANZUKA UNDERGROUND
http://www.nug.jp
住所〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-30-10
アクセス東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅5番出口より徒歩8分、JR山手線原宿駅竹下口より徒歩10分
電話番号03-5422-3877
関連画像

各画像をタップすると拡大表示します