蔦谷喜一 あおいめのにんぎょう 1988 Color on silk/27.3×18.9cm © Kiichi Tsutaya The Soda Collection

蔦谷喜一 「曽田コレクション」

NANZUKA

#絵画・平面

10月24日開始
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アーティスト

蔦谷喜一
この度NANZUKAは、戦後昭和の時代に塗り絵師として活躍した蔦谷喜一(1914-2005、通称:きいち)の個展「蔦谷喜一個展 ~曽田コレクション~」を2026年10月24日(土)から11月28日(土)まで、NANZUKAの新フラッグシップギャラリーにて開催いたします。蔦谷喜一は、大正3年(1914年)、東京築地の紙問屋の家に生まれ、戦後、少女向けの塗り絵師として活躍した画家です。大正から昭和初期にかけて、大正デモクラシーの自由な気風を浴びながら多感な青春期を過ごし、やがて少女向け雑誌や少年雑誌、婦人雑誌などに描いた独特な美少年・美少女の挿絵や美人画で一世を風靡した高畠華宵や、日本の伝統美にモダニズムを融合させた近代美人画の名手と知られる山川秀峰らに深く傾倒していく中で、日本画の近代画を牽引した川端画学校の日本画科に学びました。太平洋戦争勃発直前の1940年には、「フジヲ」のペンネームで初めてぬりえの制作を手がけキャリアをスタートさせます。紙の流通に制限があった戦時中を乗り越え、再び蔦谷の創作活動が日の目を浴びるのは、戦後まもない1947年のことでした。”きいちのぬりえ”は、GHQ支配下の厳しい検閲のあった時代に、出版流通ではなく、駄菓子屋で玩具の一種として販売され、娯楽の少なかった戦後の日本で一大ブームとなりました。やがて60年代以降に漫画やアニメ、特撮ヒーローがテレビメディアと共に登場すると、”きいちのぬりえ”も下火になります。その作品が再び極光を浴びるのは、ぬりえブームの終焉から10年以上が経った1974年、「雑貨」というカテゴリーを提唱した長谷川義太郎プロデュースによる「文化屋雑貨店」において、きいちグッズが発売されたことがきっかけでした。1978年には、資生堂ザ・ギンザ(東京・銀座)で開催された「きいちのぬりえ展」を契機にリバイバルブームが起こります。しかし、当時の再評価の多くは、「懐かしさ」や「昭和レトロ」といった消費的な観点にとどまっていました。アートの世界で、蔦谷喜一の作品が評価される転機となったのは、2002年にカルティエ現代美術財団(パリ)で開催された、村上隆氏キュレーションによる「Coloriage(ぬりえ)」展です。同展以降、文化史・美術史的文脈における再評価が進むこととなりました。

改めて蔦谷が残した絹本の肉筆画を観ると、その独創性と先駆性に驚かされるでしょう。蔦谷の描く少女像は、竹久夢二に代表される大正ロマンから続く中原淳一や蕗谷虹児などの抒情画とは一線を画しています。まるまるとした顔、過剰に大きな瞳、三頭身の体、輪郭線で描かれた人物、それらの要素が完全にフォーマット化されたスタイルの作品は、後に日本で大発生する漫画的なキャラクターの原型であり、また現代のKAWAIIカルチャーの元祖としても解釈することができます。この点において、「美少女の美術史」展のキュレーターを務めた工藤健志氏は、本展のために制作された図録に寄せた寄稿文「蔦谷喜一のぬりえと肉筆画──戦後日本の大衆文化と視覚表現」において、次のように解説しています。「それは戦後大衆文化の出発点の一つであると同時に、大正から昭和初期にかけて培われたグラフィックデザインや商業美術の視覚的美意識を、戦後社会へと再接続したメディアでもあったのだ。すなわち、喜一のぬりえとは、敗戦によって分断されたかに見える戦前と戦後の視覚文化を結び直す「ミッシングリンク」と言えるだろう。(中略)すなわち、大正・昭和初期に流行した『カワイイ』文化は、喜一のぬりえを媒介として戦後の少女表象へと継承されたのである。現代サブカルチャーの源流を築いた先駆者と評される蔦谷喜一の作品が、近年、美術の文脈においても再評価され始めた背景には、その作品が日本の伝統美術の技法と大衆文化のイメージを接続していること、さらに大正から昭和、そして現代へと至る歴史的連続性を保持していることが挙げられるだろう」本展覧会に出展される34点の作品は、蔦谷が1985(昭和60)年頃から日本画の技法を用いて精力的に制作した「童女百態シリーズ」です。これらの貴重な作品たちは、コレクターの曽田大資氏が、熱心に蔦谷のスタジオに通い続けて、完成した作品を継続的に収集し、これまで一般公開されることなく大切に保管されてきました。本展に寄せて、曽田大資氏(曽田コレクション)より、コメントを頂きましたので、ここで一部抜粋にて紹介します。

「私が蔦谷喜一先生に初めてお会いしたのは1983年の春だったと思います。お会いしたころの先生はもう殆ど『ぬり絵の仕事』はしておられず、ときどきの頼まれ仕事の日本画を描かれて暮らしておられたと思います。初めは、私の二人の娘たちの七五三のお祝いに小品でも描いていただければと思い、訪れたはずだったのですが、先生の描く世界の魅力に引っ張られるように、アトリエ通いがはじまりました。(中略)先生は単なる『ぬり絵』の作家ではありません。先生の作画を近くで見てきた私にとっては、この作品群は日本画そのものです。その卓越した技量、豊かな感性、そして作品世界の深みは、紛れもなく一人の日本画家として高く評価されるべきものだと私は思っています。(中略) 私が長年大切に守り続けてきた作品が、多くの皆さまの目に触れ、新たな出会いを生み、喜一先生の芸術が次の世代へと受け継がれていくことを心から願ってやみません」
─曽田大資(曽田コレクション)

本展の開催に合わせ、曽田氏による特別エッセイと、工藤健志氏による論考「蔦谷喜一のぬりえと肉筆画──戦後日本の大衆文化と視覚表現」を収録した『蔦谷喜一作品集 曽田コレクション』を、当社NANZUKA Publishingより出版します。本展を皆様にご高覧いただけますと幸いです。

スケジュール

2026年10月24日(土)〜2026年11月28日(土)

開館情報

時間
10:00 〜 19:00
Art Week Tokyo 期間は開催時間が異なります。詳細は公式ホームページよりご確認ください。
休館日
日曜日
観覧料無料
展覧会URLhttps://nanzuka.com/ja/exhibitions/kiichi-tsutaya-from-soda-collection
会場NANZUKA
https://nanzuka.com/ja
住所〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-17-1 渋谷アクシュ3F
アクセスJR渋谷駅ヒカリエ口より徒歩3分

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