弊廊では、斉木駿介の個展「Clear Vision」を開催いたします。
斉木の作品は、現実とインターネットが交錯する現代の日常を、キャンバスという物質の上で再構築するものです。彼が描くモチーフは、SNSのタイムラインに並ぶニュースや何気ないつぶやき、街角のゴミや看板など、私たちの視界を一瞬で通り過ぎていく断片的なイメージです。それらを解体し、重ね合わせることで、曖昧でつかみどころのない「今」の空気を可視化しています。
本展では、ギャラリー全体をグリーンバックで覆い、絵画作品がその上に漂うように展示されます。グリーンバックは、映像編集の際に不要な背景を消去し、必要なものだけを映し出すための緑色のスクリーンです。斉木はそれを、現実やネット上で失われていく情報を浮かび上がらせる装置として用いています。グリーンバック空間に入った鑑賞者もまた、展示の一部として取り込まれ、作品と自身の存在が交差するような体験を得ることになるでしょう。
斉木は自身の制作について、「消えゆくものに重さを与え、時間の断片を物質として留める手段」と語ります。現実の風景が時間とともに変化し、記憶の中で薄れていく一方で、永遠に思えるデジタル情報もまた、現実と同じように風化し、リンクもやがて断たれていきます。本展のグリーンバック空間は、変わりゆく現実や情報を選択的に映し出す装置として、失われるものと保存されるものの境界を意識させ、鑑賞者に現代の記録の儚さと永続性を静かに問いかける場となるのではないでしょうか。
まだコメントはありません