Gallery 38Gallery38は、ステファニー・クエールによる4年ぶりの個展「 Animal Instinct 」を開催いたします。
ステファニー・クエールの人生とアートは、アイルランド、アングロサクソン、バイキング、ノルウェー、スコットランド、イギリスからの影響を色濃く残す古代文明を持つマン島と密接な関係にあります。彼女はこの島で生まれ育ち、現在も家族の農場で両親と共に羊や牛を育てながら、かつての風車小屋で作品を制作しています。また、今回の新作展にはマン島の自宅周辺から掘り出された土も一部使用されています。
クエールの作品は、直接的かつ即興的です。粘土は指や手や腕を使ってこねられ、投げられ、伸ばされて、制作途中の痕跡が残るように形作られたあと、彼女の農場にある窯で焼成されます。鑑賞者とより直接的につながるため額に入れずに展示されるドローイングは、粘土、グラファイトパウダー、インクウォッシュを使った身体的な動きから制作を始め、さらにペンの線によって動物を浮かび上がらせます。クエールは自身のドローイングプロセスを「よりマインドフル、より瞬間的、より動物的」と表現しています。
クエールは本展において、新石器時代や古代ギリシャの壺に使われたものと同じ材料を使い、4万年の人類の歴史の中で現れてきた動物のイメージの探求を続けています。彼女が作り出す動物はただ擬人化されているのではなく、神話やトーテムに根ざしたものだということは、ミノタウロスと地上に生きる動物たちの作品によって鮮明に表されています。新作として、本展の為に初めて自身の農場の粘土と藁で作り、ヒンズー教で神聖な生き物とされる牛、スカベンジャーとして生態系のサイクルを体現し、チベット人と古代エジプト人に崇拝されるハゲワシ、同じくエジプト人に崇敬され恐れられたヒヒ、インドでは神聖視されながら他の地域では悪者にされているネズミなどが展示されます。また、遺伝子的に私たちと最も近い親戚であるチンパンジー、大地を肥やすためにイザナギとイザナミの元へ遣わされたとされるセキレイ、ケルト文化において人間と大地、月、季節、 寓話、神話、狂気との関係を象徴するウサギも制作されました。
クエールが作り出すイメージとその制作方法とは、人類の持つ破壊性や、忍びよる人工知能という実体のない脅威に触発された、動物であることについての瞑想です。彼女は動物と人間を同一視するのではなく、人間であるというのはどういうことか、そして、自然より上位に立つことができるという傲慢な思い込みの根底にあるものとは何なのかを問いかけています。動物の本能を理解しようとすることは、私たちが失った地球との精神的なつながりを再発見する方法なのです。