art cruise gallery by Baycrew’sは、第14回目の展示として、スティーブン・ギルの個展『Stephen Gill』を2026年9月11日(金)より開催いたします。ギルは、写真を「世界を記録するためのもの」から、「世界とともにイメージを生み出すためのもの」へと拡張してきました。《Hackney Flowers》では、ロンドン東部のハックニーで撮影した写真に同地域で採集した花や種を重ね、さらには土に埋めるなど、時間や土地との協働を制作のプロセスに取り込んでいます。また、《Talking to Ants》では、撮影場所で見つけた植物や昆虫などをカメラ内部に入れ、意図せずに生じた影や痕跡を風景とともにフィルムへと定着。《Please Notify the Sun》は、彼自身が一匹の魚の体内に入り込むという「探検」を通して制作された作品です。
その探求がひとつの到達点として現れるのが、《The Pillar》です。スウェーデンの農地に一本の木製の杭を立て、その前にモーションセンサー付きのカメラを設置。ギル自身がその場に立ち会うことなく、杭に集まる鳥たちがカメラに収められました。羽ばたき、休息、羽づくろい、飛び立つ瞬間──そこに写るのは、写真家が決定的瞬間を選び取った結果ではなく、鳥と偶発性、そして装置との出会いによって生まれたイメージです。ギルは、写真家の「撮る」という行為を少しずつ手放し、自然そのものや偶然に作品を委ねていきます。そこには、写真をコントロールするのではなく、写真が生まれる状況そのものをつくるという彼独自の姿勢があります。《The Pillar》は、その静かな実験の先に立ち現れた作品です。
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