Sterling Ruby “Ocean (9210)” 2026 Watercolor and pen on paper 30.5 x 45.7 cm © Sterling Ruby Photo: Sterling Ruby Studio

スターリング・ルビー 「OCEAN」

タカ・イシイギャラリー

#絵画・平面

11月4日開始
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アーティスト

スターリング・ルビー
タカ・イシイギャラリーは、スターリング・ルビーの個展「OCEAN」を11月4日(水)から12月12日(土)まで開催いたします。本展は、草月会館で大規模なインスタレーション《SPECTERS》(2023年)を発表して以来となる日本での個展であり、当ギャラリーでは5回目となります。タカ・イシイギャラリー 六本木では最新の紙作品と陶芸作品を、タカ・イシイギャラリー 京橋では、約10年ぶりの発表となるスプレー・ペインティング「SP」シリーズの新作を展示します。

この1年、スターリング・ルビーは、ハワイとカリフォルニアの海岸を戸外で描いた、親密な趣をもつ一連の小品に集中的に取り組んできました。スケッチブックと携帯用の水彩セットを使って制作されたこれらの作品は、それまでの大規模なスタジオ制作とは明らかに異なるものです。広々とした空、濃い霧、荒れ狂う海を描いた小さな画面からは、19世紀前半の名高い海景画にも通じる感覚、すなわち「崇高」が立ち現れます。芸術家たちは古くから、海が呼び起こす畏敬と恐怖を表そうとしてきました。なかでもロマン主義の画家たちによる海景は、実際に風景の中に身を置くことで得られる感情や個人的な体験を重視し、新古典主義から離れていく美術の大きな転換を示しています。

海はロマン主義にとって欠かせない主題となり、J・M・W・ターナーのような画家は、晩年の数十年にわたって、海辺の刻々と変わる大気に魅了され続けました。同じ頃、地球の反対側では、葛飾北斎が《神奈川沖浪裏》をはじめ、海を題材にした数々の名高い作品を生み出していました。ターナーや北斎と同じように、ルビーも実際に海を目の前にして繰り返し描き、その一瞬ごとに移ろう気配を捉えようとしています。静かな水面にはたまり広がるような灰色を、雲の映り込みには乳白色を用い、立ち上がる波頭は崩れ落ちるような筆致で描いています。

こうした大きな身振りは、新作の陶芸作品やスプレー・ペインティングにも見られます。ルビーは粘土を削り出して、長く弧を描く峰のような形をつくり、その表面を青、紫、金の光沢のある釉薬で覆うことで、水面にきらめく太陽や空を思わせるさまざまな反射を生み出します。しかし、海上を覆う雲や霧の重さが最も強く感じられるのは、再び制作が始まった「SP」(スプレー・ペインティング)シリーズです。新たな空間性をもつこれらの絵画(いずれも《SP. H.》と題されています)は、タイトルと、各キャンバスの下部を横切る明瞭な画面の分割の双方によって、水平線を意識させます。各作品の中心となるのは、空と大地の境目に浮かぶ、光る目を思わせる二つの光を帯びた領域です。この二つが画面の内側から光が発しているような感覚を生み出す一方、上方から垂れ落ちる滴は涙や雨を思わせます。大きく広がる空は海景と響き合い、海の水平線が果てしなく続くような感覚を生み出します。

広大な太平洋は、日本とカリフォルニアを結ぶだけでなく、環太平洋地域とその島々に育まれてきた無数の文化をもつないでいます。そこに暮らす人々は、古くから海に敬意を捧げてきました。古代日本やポリネシア、アメリカ沿岸部の先住民の信仰から現代のサーフカルチャーに至るまで、海をめぐる神話は尊ばれ、その周期やリズムに従うことが一つの生き方となってきました。文化を越えて、海は「命の母」と捉えられています。海は聖なる源であり、宇宙観における入り口であると同時に、相反する性質が均衡した特異な存在でもあります。命を与える一方で奪いもするもの、時に制御不能な力となり、また時に穏やかに広がるものでもあります。ルビーにとって、海を描き、造形することは、こうした瞑想的な側面と切り離すことができません。寄せては返す波音は、海の呼吸ともいえる普遍的な響きを伝えています。しかし同時に、その場所に身を置いて描くという現代的な行為と、主題そのものに深く身を浸そうとする試みが、リージョナリズム(地域主義)をあらためて捉え直す契機となっています。

ペンシルベニア州の農村部で育ったルビーが1990年代初頭に受けた美術教育は、N・C・ワイエスとアンドリュー・ワイエスを中心とする、ブランディワイン地域の絵画の伝統に根ざしていました。ワイエス親子は、アメリカの暮らしを親密なまなざしで描くことで、リージョナリズムを形づくりました。二人の肖像画は、当時の伝統的な肖像画とは異なり、人物の感情や個性を浮かび上がらせています。一方、風景画には広大で寒々とした空気が漂い、農場での厳しい暮らしの現実がしばしば映し出されています。彼らもまた、メイン州ポート・クライドにある一家の夏の家兼アトリエで、海岸を観察することに多くの時間を費やしました。

ある意味で、リージョナリズムとロマン主義には共通するところがあります。どちらも進歩を重視する潮流に背を向け、個人の知覚や表現を重んじたからです。ワイエス家の画家たちは、描く対象やその周囲から感じ取られる情感を捉えようとしました。一方、ターナーと北斎は、刻々と変わる空や打ち寄せる波を描くため、繰り返し海へと向かいました。いずれも、それぞれの土地にとって切り離すことのできない生命の源に向き合っていたのです。それから長い年月を経た今も、ルビーが繰り返し海に向き合うことは、なおラディカルな力を帯びています。捉えがたい海の姿と格闘し続けるうちに、ルビーはやがてその圧倒的なスケールと激しい変化に身を委ね、そこに海への敬意が生まれます。海は人の力で支配できるものではないと認めることで、繰り返し海へと立ち返る行為は、畏敬の念と切り離せない、海を守る責任を担う行為となるのです。

スケジュール

2026年11月4日(水)〜2026年12月12日(土)

開館情報

時間
12:00 〜 19:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日

オープニングパーティー 2026年11月4日(水) 17:00 から 19:00 まで

観覧料無料
展覧会URLhttps://www.takaishiigallery.com/jp/archives/38816/
会場タカ・イシイギャラリー
http://www.takaishiigallery.com/
住所〒106-0032 東京都港区六本木6-5-24 complex665 3F
アクセス東京メトロ日比谷線・都営大江戸線六本木駅1b出口より徒歩2分、東京メトロ南北線・都営大江戸線麻布十番駅7番出口より徒歩8分、東京メトロ千代田線乃木坂駅5番出口より徒歩11分
電話番号03-6434-7010

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