この度、Yoshimi Artsでは8回目となる寺林武洋の個展「NEW LIFE」を開催いたします。現在多くの作家が作品の制作にあたって写真などメディアを活用していますが、寺林は一貫して対象の前に立ち、自身の眼を通して作品を描いており、作品制作に費やす大半の時間を対象の前で過ごしています。現代の殆どの人が物や事をネットで見る世の中において、物は二次元的に、事は平坦な情報として見られていると言っても良いかもしれません。しかし、寺林は、大学でデザインを学んだこともあり、機械が物を認識するよりも目で見る方が論理的に優れている事を理解しており、あくまでも物を見る事へのこだわりを持ち作品を制作しています。
また、寺林は、モチーフを選ぶ際に「特別な感情が湧き、描きたいとリアルに思う」ことが重要だと語ります。その言葉は、彼の作品を理解するうえで重要な手がかりとなります。日々の生活のなかで目にする、家の中の何気ないものや、取るに足らないと思われるものに対して生まれる「描きたい」という感情こそが、寺林の作品を成立させる原動力となっています。寺林は、2004年に広島市立大学大学院へ入学して以来、長年暮らしてきたアパートと、その周辺の生活圏を描いてきました。しかし、そのアパートが老朽化などにより取り壊されることが2021年に決まります。寺林は、大家に自身の作品について説明し、取り壊しを考え直してもらえないかと何度も直接伝えるなどしましたが、決定が覆ることはなく、2023年に引っ越しを余儀なくされました。
退去した後も、寺林はアパートが解体される様子を何度も見に行ったといいます。長年描き続けてきた場所が失われていく過程を、自らの眼で見届けたのです。そして現在は、かつてのアパートから数分歩いた場所に新たな住まいを構え、そこでの日々の生活と空間を描いています。本展「NEW LIFE」では、その新しい住まいで描いた作品を発表します。住む場所が変わっても、寺林が対象の前に立ち、自らの眼で見つめ、そこにあるものを描くという姿勢は変わりません。新しい生活のなかで見つけた何気ないものへの眼差しと、そこから再び生まれた「描きたい」という感情。日々の生活を見つめることから生まれた、寺林の新作をご覧いただければと思います。
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