ファーガス・マカフリー 東京アメリカ人画家、テリー・ウィンタース(Terry Winters)は 40年以上にわたり、近代的抽象表現と自然界の構造の間の関係を追求してきました。初期作品の多くでは植物を彷彿とさせる有機的なフォルムが描かれ、やがて生物システムの構図、数学的な図表、音楽的な表記、そしてデータの可視化へとテーマは発展していきます。
1970 年代プラット・インスティチュートを卒業後当時ニューヨークの中心的潮流であったポストミニマリズムの言説に没頭しつつも、10 年間ひっそりと素材とメタファーとしての絵画の実験を続け、82 年にコンセプチュアル、ミニマル、ポップアートの紹介の中心的存在として知られるソナベント・ギャラリーでデビュー。以降アメリカ、ヨーロッパを中心に主要美術館を含む会場で発表を続けています。
「(私たちが知る何かとの)類似性を見つけることができる、現実世界の感覚を喚起させるポイントまで絵画を推し進めます。抽象的イメージが一種実在するものになるのです」とウィンタースが語る通り、キャンバス、紙の絵画作品では、フォルムと構図が共鳴し合う彼独自の視覚言語をとおして隠喩的な感覚が呼び起こされます。
Fergus McCaffrey Tokyo での個展では6点の新作絵画を展示予定。それぞれの作品が方向を固定しない、宇宙的でありながら分子的なネットワークを描き出しており、ウィンタースの制作に一貫している自然界を通底するパターンとシステムを想像させるイメージへの強い関心を見ることができます。タイトルが示唆するように様々な空間的境界がテーマであり、大きさと空間の認識をシフトさせるダイナミックな風景画といえます。自律的に広がるフォルムは緩やかなグリッド構造から出発し、膨らんだり曲がったりしながら、新しい空間的視点を生み出しています。説明的でシンプルなタイトルとは裏腹に、複雑な色彩、実験的な形、活気に満ちた絵の具のタッチの作品群は整然とした計算と詩的な即興性の間を揺らいでいます。