マス・コミュニケーション時代が到来した戦後の日本では、印刷技術の飛躍的な発展とともに美術と大衆文化の結びつきが一層強まり、複製メディアによる表現が関心を集めました。印刷/版画/グラフィックデザインという領域は近接し重なり合いながらも決定的なズレのある、まるで〈断層〉のような関係性であり、その断層の意味を積極的にとらえ直して自在に接続したり、あるいはその差異を強調するような、さまざまな実践が展開されていきました。
その舞台の一つとなったのが「東京国際版画ビエンナーレ展」です。同展は世界各国から作品を集めた国際的な規模の版画展で、1957年から1979年まで東京国立近代美術館、京都国立近代美術館などを会場に全11回が開催され、当時の気鋭の版画家やデザイナーの活躍の場となりました。本展は国立美術館のコレクションから東京国際版画ビエンナーレ展の出品作家を中心にご紹介します。同時代の多様な視覚表現のなかに交錯した版画とグラフィックデザインの様相を通して、印刷技術がもたらした可能性とその今日的意義を改めて検証します。
あわせて、1977年に開館した東京国立近代美術館工芸館の記念すべき第1回目の展覧会「現代日本工芸の秀作:東京国立近代美術館工芸館 開館記念展」をふり返る特集展示も行います。東京国際版画ビエンナーレ展が開催されていた当時の、工芸の現代性にも目を向けていただく機会になれば幸いです。
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