弘前れんが倉庫美術館松山智一(1976年生まれ)は、ニューヨークを拠点に活動し、鮮やかな色彩と精緻な描線による絵画や、大規模なパブリック・アートとしての彫刻など、大胆さと繊細さを併せ持った作品を発表しています。その作品に描かれるのは、日本や中国、ヨーロッパなどの伝統的な絵画からの引用や、ファッション誌の切り抜き、実在する消費社会の生産物や日常生活で慣れ親しんだ商品やロゴなど、さまざまなイメージのサンプリングです。一見しただけでは引用元が判別不可能なほど、複雑に組み合わされた大量のイメージ群は、現代社会に生きるわたしたち自身を取り巻くものであり、いつかどこかで見ていたかもしれないものでありながら、普段は繋げて考えることの少ない、わたしたち一人一人の身体の奥底に蓄積された記憶の束が、形を持って現れたようでもあります。
こうした松山作品の制作の根底には、豊かな自然と歴史的な遺産が息づく岐阜に生まれ、アメリカ西海岸のストリートカルチャーに触れた少年時代、再び日本に戻ると、経済学を学んだ後、一度はアスリートの世界に身を置くも、デザインの道へと転身した二十代と、伝統文化から現代のカウンター・カルチャーまで、対極にあるものとして理解されることの多い世界の多様性を、身をもって実践してきた彼の半生が深く影響を及ぼしています。
本展は、松山がコロナ禍を前後する時期に制作した近作と本展で初めて発表される新作を中心に、アーティストとしての進化と深化の過程を紹介するものであり、常に新しい文化を受け入れてきた歴史が息づく街である弘前で、作家の新たな魅力を発見する機会となることでしょう。
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