このたび入善町下山芸術の森発電所美術館では、令和8年度企画展として、岡山県在住の現代美術家・柴川敏之の個展を開催いたします。
2026年は、本館の前身である旧黒部川第二発電所が稼働してから100年の節目にあたります。1926年の竣工以来、長い時間を刻んできたレンガ壁には、柴川が探求してきた「未来の考古学」という視点と響き合う独自の時間の層が宿っています。柴川は、現代の日用品が2000年後の41世紀に“出土品(化石)”として現れたらどう見えるのかという想像力を起点に、時間の痕跡を物質に刻む作品を生み出してきました。
本展ではこの建築物を、百寿を迎えたN氏に見立て、N氏が歩んできた100年の時間と、これから見つめていく未来の視点を重ね合わせながら、過去・現在・未来が交差するインスタレーションを展開します。かつて水が電力へと変換されていた空間は、いまや文化のエネルギーを生み出す場へと姿を変えました。その変遷は、柴川が探求する「時間の堆積」というテーマと呼応し、100年の記憶を宿す建物そのものが巨大な“時間の器”として作品世界に溶け込んでいきます。
100年前から受け継がれてきた発電所の記憶、現代の日用品が未来へ残す痕跡、そして100年後、さらには2000年後の世界を想像するまなざし。三つの時間軸が重なり合うことで、観る者は自身の時間感覚を揺さぶられ、過去と未来の距離を新たに捉え直す体験へと導かれます。歴史をまとった空間と未来を掘り起こすような柴川の作品が響き合うこの場で、季節の移ろいとともに漂う静かな時間の流れに身をゆだね、心の奥に眠る記憶と未来がふと交差する瞬間を味わっていただければ幸いです。
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