このたび、アーティスト、藤本祐氏による個展「CURSE ME GOOD」を開催いたします。高度なデザイン性がありながら日常の実用性が重視される「リアルクローズ」へ、モード界が突き進んだ90年代。藤本祐氏はそのシャープでオリエンタルな唯一無二の存在感をもって次代を拓くデザイナーたちの精神にフィットし、表徴できるモデルとしてひときわ異彩を放ちました。国内外のクリエイターたちがこぞってキャスティングし、中でもマルタン・マルジェラの独特な世界観は、彼女なくしては波及力が少なからずディップしていたことでしょう。
一方で彼女はその当時から今に至るまで、まるで日常動作や会話のようにドローイングを描き続けています。誰でも手に入る黒インクのボールペンを使って、頼りなさそうに細い筆跡をつなぐ絵。丸みを帯びた形がまるで自律的に細胞分裂を起こしていく抽象的な線画は、ゼンタングルも連想させますが、もっと柔軟で自由奔放。ユーモラスな見栄えもありながら、安易な妥協を許さないテンションが自然に同居しています。描画を「他人に見せてはいけない」手癖の一種と思っていた藤本氏は青春期から、その絵を描いては捨て続けていたと言います。2012年からようやく保存し少しずつ公開し始めて以降、つい見入ってしまう画想の熱量と比肩するもののない洒脱なセンスが高く評価されるようになりました。
本展は藤本氏にとって初めての個展であり、ボールペンというリアルなツールを手にした孤高な表現者にとって、アート界は未知の領域。これは「起きることを楽しみに待ってみようと。そのためのアクション」と彼女は語ります。直感的な面白さで決めたというタイトルの中央に挿入した「me」の優れた飛翔力を、鑑賞者は深い衝撃とともに受け止めるかも知れません。約15年間のペンドローイングの中から今の視点で選び直し、額装と構成にも彼女らしいアレンジを加えながら約40点を展示いたします。
まだコメントはありません