この度、あをば荘では足立雄亮による個展「(抗)力のモニュメントⅡ」を開催いたします。本展は、足立が2023年に制作した「(抗)力のモニュメント」のシリーズ2作目の展示となります。現代において他者との関係は「傷つける / 傷つけられる」「害する / 救う」という両極の価値判断で語られ、回収されていく傾向があると感じます。例えば、「コンプライアンス」という言葉が繰り返し語られる背景には、「傷つけること/傷つけられること」への社会的な感度の高まりがあると考えます。しかし、人は生きる上で他者との摩擦や衝突を避けることはできません。だからこそ、両極の意味や価値判断に先立つものに着目することで、小さな力関係や隠れた作用を見直すことが重要なのではないかと考えました。
本作では「抗力」に焦点を当てます。『平凡社 大百科事典』では抗力という言葉の由来は「面が物体の侵入を防ぐために抵抗する力であるから」とあります。私たちは、互いに接触することで必ずその力を生じさせます。その力が過剰であれば身体を傷つけますが、互いの身体の境界を保つためにも不可欠な作用です。そこに着目した時、「傷つける / 傷つけられる」という意味は存在せず、ただそこに作用があります。展示では2名が互いの身体の石膏型を取り合った彫刻とパフォーマンスビデオを設置します。石膏は水を混ぜると硬化する素材です。その硬化中に動けば簡単に崩れてしまい、型取りはできません。しかし、型を完成させるには身体を動かす必要があります。その時、石膏はひび割れ、身体には傷がつきます。その痕跡は互いの身体に、石膏に、サイザルに、木材に、抗力が働いた結果です。しかし、それは相手の痛みへの思いやりや、石膏が崩れないようにする体勢の工夫など、細やかな力が集積する標でもあります。単なる二項対立に回収されない存在同士の関係性を根本的な力関係から提示する試みを行います。
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