公開日:2020年7月10日

千葉市美術館が拡張リニューアルオープン:建物から企画展まで、見どころをレポート

7月11日、拡張リニューアルオープンを迎える千葉市美術館の見どころをレポート

1995年、千葉市中心市街地の一角に中央区役所との複合施設として開館した千葉市美術館が2020年7月11日、11階建の建物すべてを美術館として改修し、拡張リニューアルオープン。リニューアル後の同館と展覧会の様子をレポートで紹介する。

美術館に足を踏み入れまず目に入るのが、建築家の矢部又吉が設計したネオ・ルネサンス様式の建物の意匠。千葉市内に残る数少ない戦前の建物(旧川崎銀行千葉支店)を包み込むように設計されている同館は、1階の「さや堂ホール」でこの構造とディティールを堪能できる。このたび「さや堂ホール」がエントランス化し、カフェ、ショップが新設されたため、時がとまったようなその空間でゆっくりと時間を過ごすことができる。

1階の「さや堂ホール」はネオ・ルネサンス様式の意匠に注目

今回のリニューアルでとくに注目したいのは、新設された待望の常設展示室。同館の約1万点にものぼるコレクションは「近世から近代の日本絵画と版画」「1945年以降の現代美術」「千葉市を中心とした房総ゆかりの作品」という3つの収集方針に沿って収集されてきたが、常設展では1ヶ月おき(現代美術は3ヶ月おき)の展示替えにより、そのバラエティに富んだコレクションを楽しめる。

常設展の現代美術コーナーは、今回は草間彌生をフォーカス。海外の美術館からも多数の貸し出し依頼があるという草間作品は、規模は小さいながらも充実したラインアップとなっている。

新設の常設展示室
常設展示室より、同館が所蔵する草間彌生の作品。現代美術は3ヶ月おきに展示替えが行われる

第1弾の企画展は江戸時代の絵画や版画を中心に、室町時代から昭和まで、古今の多彩な動物イメージが溢れる「千葉市美術館拡張リニューアルオープン・開館25周年記念 帰ってきた! どうぶつ大行進」。2012年開催の人気企画展「どうぶつ大行進」のバージョンアップ版となる本展では、前回好評を博した110点に新たなコレクションを含む150点を追加。完全初公開の作品30点も披露されている。

新型コロナウイルスの影響で海外からの作品貸し出しが困難になり、当初の予定を急遽変更しての企画となったというが、人々が災厄をどのように描いてきたかなど時事を反映した内容もあり、「動物」を起点にコレクションの多様さを実感できるのが魅力だ。

展示風景より、石井林響《王者の瑞》(大正7年[1918]) 
展示風景より、川合玉堂《白兎》(昭和[1926-89]前期)

注目は展示室だけではない。今回のリニューアルでは、「子どもアトリエ(つくりかけラボ)」、蔵書を大幅に増やした図書室(びじゅつライブラリー)、ワークショップルーム(みんなでつくるスタジオ)、美術愛好団体や学生サークルなどが利用できる市民アトリエが新たにオープン。

中でも、アーティストが滞在制作を行う「子どもアトリエ(つくりかけラボ)」では、人の遊び心やイマジネーション、創造力を育むデザインの現場で活躍する建築家の遠藤幹子が参加。遠藤は千葉にまつわる民話をもとに、オンラインワークショップを行いながらハスの花を空間に満たしていくという。

子どもアトリエ(つくりかけラボ)
図書室(びじゅつライブラリー)

「五感で楽しむ」「素材にふれる」「コミュニケーションがはじまる」の3つのテーマを軸としたこのアトリエでは、アーティストが滞在制作を行い、訪れた人々と関わりながら、空間に合わせたインスタレーションを制作することが目的。2021年1月からは遠藤から志村信裕にバトンタッチされる。

新設の各種スペースはもちろん、同館のコレクションをこれほどの規模で見られる機会は貴重。今回のリニューアルのタイミングで訪れてみてはいかがだろう。

千葉市美術館の外観

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