好きで嫌い、希望と諦めの距離感で:DIESEL ART GALLERYで個展開催中のJUN OSONにインタビュー

多方面で活躍。DIESEL ART GALLERYで個展を開催中のJUN OSONにインタビュー

poster for Jun Oson “D_I_S_T_A_N_C_E”

JUN OSON 「D_I_S_T_A_N_C_E」

渋谷エリアにある
DIESEL ART GALLERYにて
67日後終了

In インタビュー by Chiaki Noji 2020-11-20

2020年。地下鉄で、テレビの中で、街角で、知らず知らずのうちにJUN OSONのイラストを目にしているだろう。あるいは「カラフルでポップ」「シニカル」と評されるその特徴的なイラストを見れば、きっとどこか何かで見た記憶が蘇ってくるはずだ。

鎌倉を拠点とするイラストレーターのJUN OSONは、これまでにテレビ番組「あはれ!名作くん」「激レアさんを連れてきた」の作画やイラスト、「東京メトロマナーポスター」のイラスト、星野源「POP VIRUS」のツアーグッズデザインなど、十数年にわたって多方面で活躍してきた。

そんなOSONが、国内4年ぶりとなる大型個展「D_I_S_T_A_N_C_E(ディスタンス)」をDIESEL ART GALLERYで開催中(〜2021年2月4日)だ。初の巨大作品を含む20点以上の新作ペインティングに共通するテーマは、コロナ禍におけるソーシャルディスタンス。個展やこれまでの活動、今考えていることについてOSONに話を聞いた。

ポップでシニカルな理由

DIESEL ART GALLERYの黄、青、ピンクのカラフルな壁面に並ぶ、JUN OSONによる新作大型ペインティング。そして、見慣れたディスプレイや紙面上ではない木製のレリーフ状の作品は、わずかな色の濃淡や表面の質感がOSONのキャラクターイラストに立体的な表情を与えている。それらのいずれにも共通するのは「カラフル」「ポップ」な要素だ。

「昔から、自分の描くイラストはポップで親しみやすくありたいと強く思っていました。“知る人ぞ知る”というよりも、多くの人に受け入れられるほうが嬉しいです」

いっぽう、OSONのイラストの世界観は“シニカル”と言い表されることも多い。そのことについては、「僕自身がかなりシニカルなので、それが自然と出てしまっているのかもしれません」と笑う。「僕はよく人物キャラクターを描きますが、人間が好きか嫌いかと言われるとその両方。すべての物事に対してつねに希望と諦めを持っている感覚があるんです」。

希望と諦めがあざなうそのスタンスは、作品のみならずテキストでも見ることができる。例えば、コロナ禍におけるソーシャルディスタンスがテーマの今回の個展のステートメントには次のようなことが書かれている。「こちらの意思と関係なく人との距離(物理的にも精神的にも)というのは大きな流れの中で形作られる。でも、僕らはインターネットがあればきっと生きていけるだろう」。ここからは、過剰にSNSで人々が接続されてしまう状況への、良いとも悪いとも言えない気持ちが見てとれる。

JUN OSONは1979年愛知県生まれ。ペンネームのOSONは、地元の日進市にちなみ「OutSider Of Nisshin」の頭文字をとったもの。大学でデザインを学んだ後、約1年間のデザイン事務所勤務を経て、イラストレーターとしての活動を開始した。約1年で方向転換した理由について、OSONは「我を出したかったから」と振り返る。

「当時の自分がやりたかったのは、CDジャケットのデザインや、雑誌の『relax』や『STUDIO VOICE』などで見るような、クリエイティブなデザインでした。でも、地方のデザイン事務所ではそこに到達するまでがとても遠くて、もっと早く、好き勝手にクリエイティブで我を出したいと思ったときに、デザイナーではなくイラストレーターという手もあると気づいたんです」

雑誌で紹介されるジェームズ・ジャーヴィス、ジェフ・マクフェトリッジらのイラスト作品は、ストリート、デザイン、アートなどの幅広い分野で高い評価を得るもの。彼らの活動に憧れ、OSONはフリーランスのイラストレーターとしての活動へと舵を切った。

2005年に上京後、イラストレーターとして独立してからこれまで、OSONはテレビ、雑誌、ウェブ、公共交通機関のポスターまで、多種多様な媒体のためにイラストを発表してきた。その中でもとくに印象的だった仕事を聞いたところ意外な答えが返ってきた。

「ない……ですね。どんな仕事も一定の気持ちで受けるようにしているので、すべてが同じくらい印象的です。もちろん、『(テレビ番組の)シャキーン!をきっかけに、おかげさまで収入が安定してきたな』とか『星野源さんのツアーグッズは反響が大きくて嬉しかったな』とか、ないといえば嘘になります。でも僕は、心でも状況でも波乱万丈なのがイヤなんです(笑)。淡々と、アップダウンはないほうがいいですよね」

挑戦する心で向き合った個展

企業から依頼されるクライアントワークを受けるいっぽうで、自らテーマを決めての作品発表も行ってきたOSONだが、本来、作品のテーマを決めることには苦手意識があったという。

「クライアントワークで大切なのは、先方のリクエストにしっかりと応えて納品すること。リクエスト=テーマありきなので少し無責任な気持ちでいられますが、展覧会では最初のテーマづくりから作品が売れるまで、すべて自分ごとなので結構大変さを感じるんですよね。スタートからゴールまで、分岐点の連続です」

しかし今回は、展覧会の依頼と同時期に世界がコロナ禍に突入。OSONは、状況に要請されるかたちで、コロナ禍でのソーシャルディスタンスや人の価値観の変容などをテーマに作品をつくることを決めた。

人と人との距離、人とインターネットの距離などを描いた新作が集まる「D_I_S_T_A_N_C_E(ディスタンス)」展だが、本展をとくに象徴するのがベニヤ板を支持体とした「ステイホーム」シリーズ3点。自宅でひとり、インターネットや趣味に勤しむ3人がそれぞれ描かれており、外界と断切されながらも“心地よく孤独に暮らせてしまっている”空気が醸されている。3点のうち中央に配された《ステイホーム1》は、個展のキービジュアルにも使用されているもの。長い耳と赤い肌を持つ犬人間とも言うべき生命体がスマートフォンに見入っているが、こうした正体不明のキャラクターはOSON作品の常連だ。

「異種なものが自然に一緒にいる状態が好きなんです。例えば『Dr.スランプ アラレちゃん』のペンギン村の人たちって、人間も太陽も謎のキャラクターも、みんなが普通に暮らしていてそこになんの説明もないですよね。そういう心地良い雰囲気が好きで、昔から人間と一緒に宇宙人、ガイコツ、犬などを頻繁に描いてきました」

OSONが憧れのイラストレーターとして挙げたジェームズ・ジャーヴィス、ジェフ・マクフェトリッジをはじめ日本ではKYNEや長場雄など、近年ますます広がりを見せる、イラストとアートを横断する潮流。そうした盛り上がりは、OSONの心境にも小さな変化を与えたという。

「日本ではこれまでに何度かイラストブームがあったことは知っていますが、ここ数年のイラストとアートを横断する表現のブームは身をもって感じるものです。そんな空気に刺激を受け、イラストレーターのひとりとして、いわゆる“美術”の伝統ではない地平でやりたいようにやってみよう、と。アップダウンが苦手な安定派の自分ですが、珍しく挑戦する心で向き合った個展になっていると思います」

■展覧会詳細
JUN OSON 「D_I_S_T_A_N_C_E」
会期:2020年10月30日〜2021年2月4日
会場:DIESEL ART GALLERY

住所:東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F


開館時間:11:30〜21:00
https://www.diesel.co.jp/art/jun_oson/

会期中、会場やフライヤー、公式サイトからDIESEL公式LINEの友達になると、「D_I_S_T_A_N_C_E」展限定の待ち受けをプレゼント。また「D_I_S_T_A_N_C_E」展をオンラインで体験できるバーチャルツアーも登場。また会場では、展覧会のために作られたフィギュア(彩色版フィギュア発売日:11月28日)やTシャツ、缶バッジなどの関連グッズも販売します。詳しくは公式サイトをチェック。

Chiaki Noji

Chiaki Noji. 2019年12月よりTokyo Art Beat / Editor in Chief。Twitter:@nojichiaki ≫ 他の記事

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