私たちと東日本大震災:「3がつ11にちをわすれないためにセンター」に5つの質問

震災を起点としたこの10年間に、人々は何を考えどのように行動してきたのか? アーティストや関係者にインタビュー。

In Main Article 1 特集記事 by Art Beat News 2021-03-09

2021年3月11日、東日本大震災の発生からから10年を迎える。震災を起点としたこの10年間に、人々は何を考えどのように行動してきたのか? アーティストや関係者にインタビューを行い、忘れ得ない出来事、人間が学ぶ教訓としての震災を振り返るとともに、今後を展望する。

第1回は、宮城県仙台市にある美術や映像文化を発信する公共施設、せんだいメディアテークの「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(通称:わすれン!)。「わすれン!」は震災から2ヶ月後の2011年5月、せんだいメディアテークが主導し、市民、専門家、スタッフが協働し、東日本大震災とその復旧・復興のプロセスを独自に発信、記録していくプラットフォームとして誕生。映像、写真、音声、テキストなどさまざまなメディアの活用を通じ、情報共有、復興推進に努めるとともに、収録されたデータを「震災の記録・市民協働アーカイブ」として記録保存している。

 

1:震災が起こったその瞬間、あなたは何をしていましたか?

まだ生まれていません。

2:震災はあなたの何かを変えましたか?

「3がつ11にちをわすれないためにセンター〈わすれン!〉」は、せんだいメディアテークが開設した市民協働で東日本大震災の記録をするためのプラットフォームです。その意味では、震災は私たちの生みの親のひとりであるとは言えますが、一方では、それ以前からせんだいメディアテークが取り組んできた、地域文化のアーカイブ活動とそれを通じた学びの延長上にあり、震災後の状況下でも可能な身の丈にあった取り組みとして構想された一面もあります。つまりは、震災を契機に具現化した姿ではあるものの、震災によってゼロから生まれたものでもありません。

2011年の発足当時から今日まで、他のアーカイブに比べて決して大きな規模とは言えませんが、開設当初から〈わすれン!〉は、東日本大震災に向き合い、自分たちが目にした光景や聴いた声、あるいは、自分自身の思いを記録に残そうとする人々に対して開かれた場所であろうとしていることは変わりがありません。この10年でなんらかの変化があり、その変化が何によってもたらされたかと言えば、私たち自身の意思というよりも、震災をめぐる社会状況、それに向き合おうとする人々の営為に呼応する形で変化してきたと言えるでしょう。

3:震災にどのように向き合ってきましたか?

「わすれン!」が向き合っているのは、震災そのものというよりも、それについて考え行動しようとする人々です。よって、記録しようとする人に道具と場を提供すること、記録された映像や写真、音声などを資料として整理すること、そして、記録を通じて何かを語ったり考えたりしようとする人にその資料と場を提供することを続けてきました。

日常的には、活動をする人々の相談にのったり、時に議論しながら記録活動や資料活用を促したりしています。震災から間もないころには被害の大きさを記録するものも多くありましたが、震災翌日の3月12日の食事をテーマにした写真を集めて展示し、来場者から当時の思い出を書き綴ってもらった取り組みもありましたし、地震や津波で損なわれた土地の風景を何年かにわたり定点観測している人々もいます。

また、「わすれン!」を運営する私たちからは、ウェブサイトだけではなく、せんだいメディアテークにあるライブラリーを通じてDVDを借りられるようにし、国内外の調査研究や震災のことを考えるための勉強会やイベントに写真を貸し出すこともあります。さらには、毎年「星空と路」と題した展示・上映会を開いて、その年々にまとめられた記録の成果を公開し、記録者と来場者が対話する場を設けてきました。

4:震災を忘れてはならないと思いますか?

自ら名前に「わすれないために」と入れてはいますが、忘れてはならないと考えているわけではありません。忘れたい人もいるでしょう。まだ今は思い出したくない人もいるでしょう。ただ、この地域の歴史、もしくは、個々人の営みの蓄積としての地域文化の未来を想像するとき、少なくとも東日本大震災という出来事と、それをめぐってなされた営みは、記録/記憶にふまえるべき大事な出来事だとは考えています。

5:これからの10年間、何をしていきますか?

ひとつには、多くのアーカイブ機関が目的としているように、東日本大震災の記録を後世に、それもアクセスしやすいかたちで伝えていくことです。もうひとつには、記録するという行為やそれを表現しようとする意思を、さまざまな方法で伝えていくことだと思います。それには、生涯学習施設・複合文化施設であるせんだいメディアテークに設置されていることを生かし、記憶の風化や感性の鈍化に抗う新しい仕掛けを継続的に用意していく必要もあるでしょう。

さらに、これまでの10年と変わらないことですが、これからも東日本大震災に向きあおうとする人に対して常に門戸を開いておくことは重要だと考えています。あるいは、意識・無意識のうちに10年を一区切りにしようとする空気のようなもののなかで、やっと今からならあの日のことに触れられるかもしれないと思い至った人に対して門戸を開いておくことだと言えるかもしれません。

3がつ11にちをわすれないためにセンター
2011年の東日本大震災による甚大な被害・影響に対して、市民、専門家、アーティスト、そしてスタッフらが協働し、独自に復旧・復興の過程を記録・発信するプラットフォームとして、同年5月3日にせんだいメディアテークが開設。これまで、ビデオカメラなどの技術や経験の有無にかかわらず、趣旨に賛同した人びとが参加者となり、一人ひとりが体験した「震災」を映像、写真、音声、テキストなどで記録してきた。寄せられた記録は適切な権利処理がなされたのち「震災の記録・市民協働アーカイブ」として整理・保存され、ウェブサイトでの公開、DVDパッケージでのライブラリーへの配架、展示と上映企画「星空と路」の開催など、さまざまなかたちで利活用されているほか、記録を皆で囲み語り合う場づくりも行っている。
https://recorder311.smt.jp

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