1960年代から第一線で活躍し続ける横尾忠則。その横尾芸術の全貌を、コロナ禍以降の新作も含む過去最大級500点以上の作品と横尾自身の総監修によって眺める「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」が東京都現代美術館にて開催される。会期は7月17日から10月17日まで。
横尾忠則は、1936年兵庫県西脇市生まれ。高校卒業後、神戸でデザイナーとしての活動を始め、1960年に上京、グラフィック・デザイナー、イラストレーターとして脚光を浴びる。1980年にニューヨーク近代美術館で大規模なピカソ展を見たことを契機に、画家としての本格的な活動を開始。様々な手法と様式を駆使して森羅万象に及ぶ多様なテーマを描いた絵画作品を生み出し、2000年代以降国内の国公立美術館での個展のほか、パリのカルティエ現代美術財団(2006)をはじめ、海外での発表も数多く行われている。2012年に横尾忠則現代美術館(兵庫県神戸市)、2013年に豊島横尾館(香川県豊島)開館。
ピカソの展覧会で横尾が受けた衝撃による「画家宣言」から数えるならば、芸術家としての年月は40年にも及ぶ。そのなかで横尾は、自身の興味を惹くモチーフによって描く絵画を中心としながらも、雑誌の表紙やアルバムのジャケットなどあらゆる垣根を超えて制作し続けている。そのモチーフもまた、風景や有名人、自身の霊的な体験やインドの滞在、収集しているポストカードまでもが対象となり、横尾はおびただしい数の作品を作りあげてきた。先行して行われた愛知展での作品に、デザイナー時代の初期グラフィック作品を加えた500点以上の出展作品によって、その全貌にふれることができる。
「作品による自伝」をテーマに据え、愛知県立美術館にて開催していた「GENKYO 横尾忠則」展を、東京展にあたり横尾自身がリミックス。出品作品の半数を入れ替えるほか構成も抜本的に見直しており、横尾作品の、横尾自身のキュレーションによる展覧会となっている。
また、世界が未曾有のコロナ禍に巻き込まれた昨年から今年にかけて、アトリエに引きこもり創作に打ち込んでいた横尾。「最大級の問題作」とも言える20点以上にも及ぶその新作が、この東京展では初公開となる。
そのほかにも、1万枚を超えるポストカードのコレクションによる《滝のインスタレーション》のダイナミックな空間の体験や、撮影可能エリアに配置される自身の作品や写真を使ってマスクをコラージュを施した「WITH CORONA」シリーズなど、「全貌」のみならず細部にも楽しみが宿る、見どころの多い展覧会だ。