村上春樹ライブラリーが10月オープン。「トンネル」をくぐり村上ワールドへ誘われる、その内部をレポート

村上ワールドを肌で感じるライブラリー

In Art Beat News Main Article 2 by Yugo Asami 2021-09-22

10月1日から開館予定の早稲田大学国際文学館、通称「村上春樹ライブラリー」。世界的に著名な小説家である村上春樹の原稿や書簡、資料や関連記事などの管理を目的に、講義棟であった4号館が大規模に改築され、新たな建築へと生まれ変わった。「物語を拓こう、心を語ろう」をコンセプトに掲げる本館。その内部の様子を中心に紹介する。

まずはその建築に注目しよう。「トンネル」をテーマに据えた目を惹く外観だが、その改修を手がけたのは「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」を開催し、TABでもフォトレポートを公開した建築家、隈研吾だ。

1F⇆B1F:階段本棚

1階と地下1階の間には、本館の見どころ、階段本棚が広がる。建物外部の「トンネル」と同様に、村上作品において異世界へと誘う「入り口」のような印象を受ける。

陳列されている本は期間によって入れ替わる。開館時のテーマは、地下へ向かって右側上部が「現在から未来へ繋ぎたい世界文学作品」、左側が「村上作品とその結び目」。ひとつの興味から手にとった1冊が、新たな関心を呼び起こすような構造の妙を感じさせる。

さらに、地下へ向かって右側が上り下りするステップに、左側がその場に腰かけて本を読めるスペースになっている。棚やステップにいる、本を読んでいるフィギュアたちも注目だ。

 

1F:ギャラリーラウンジとオーディオルーム

入り口から見て左手に広がるのは、ギャラリーラウンジ。村上のデビューした1979年から2021年までの村上春樹作品の表紙を展示しており、すべて村上からの寄贈、その多くが初版本となっている。
展示スペースの反対の本棚には、日本語版の著作や村上が翻訳した作品はもちろん、世界各国の様々な言語に訳された村上作品が揃っている。
入り口右手に広がるのは、オーディオルームだ。村上の自室で鳴っているサウンドのエッセンスを伝えるためのオーディオシステムが組まれたこの部屋は、作家のオーディオアドバイザーである小野寺弘滋が手がけた。視聴のために並べられた北欧製の椅子も、ひとつひとつが違うのだが、空間に馴染んでいるような印象だ。椅子に腰掛け、レコードに耳を傾けよう。
ほかにも、ギャラリーラウンジとオーディオルームの間には、作品の変遷を見ることができる「著作年譜」や、文字通り繭に包まれたような穏やかな閉塞感が得られる「コクーンチェア」など、滞在を楽しめる仕掛けが豊富だ。

 

B1F:ラウンジ、カフェ、「村上さんの書斎」

階段本棚を下った先には、作家ゆかりの家具やピアノも置かれたラウンジが広がる。窓から外観の「トンネル」が見れるスペースは、ゆったりと読書ができる空間であり、飲食も可能。加えて、海外5都市で上映された「海辺のカフカ」の舞台装置も置かれている。
ラウンジの奥に広がるのは、早大生が独自に運営・経営するカフェだ。村上が早稲田大学在学中に夫婦で開業したジャズ喫茶「ピーター・キャット」。そこから着想を得たのがこのカフェだが、学内にある喫茶店で学生によって経営されているものはほかになく、早稲田大学としても初めての試みだ。
「村上さんの書斎」はハルキストにとってはたまらない空間だろう。机や椅子、PC、オーディオ機器、応接用家具など、作家の日常を想像できるよう現在の書斎が再現されている。

 

2F:展示室とラボ/スタジオ

階段を上がると目の前に広がるのは、シンプルな机と椅子が置かれたラボというスペース。横長の机3台と24脚の椅子が常設されており、日常的に来館者の研究・交流スペースになることを意図しているという。その奥に見えるのがラジオブースのようなスタジオだ。海外発信も可能な音響機器を備えており、ラボとともに、スペースの使い方が様々な可能性に開かれている。
2階には展示室も存在している。記念すべき1回目の展示は「建築のなかの文学、文学のなかの建築」。オープンとなる10月1日から22年2月4日まで開催される。以降も、村上文学に限らず、幅広い内容の企画展を開催予定だ。

なお、現在一般公開はしていないが、3階、4階には村上氏のスクラップブックや著作をはじめ、膨大な図書が保管された「研究エリア」もある。村上ワールドを味わう「一般エリア」のみならず、研究者たちのプラットフォームとしても大いに活用されるだろう。

Yugo Asami

Yugo Asami. 1999年千葉県生まれ。2021年6月からTokyo Art Beat エディターインターン。現代美術を中心に勉強中。現在、東京工業大学在籍。 ≫ 他の記事

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