公開日:2025年12月29日

【2025年ベスト展覧会】小川希(Art Center Ongoing/Art Center NEW代表)が選ぶ3展 |年末特集「2025年回顧+2026年展望」

年末特別企画として「Tokyo Art Beat」は、批評家やキュレーター、研究者、アート好きで知られる有識者の方々に、2025年にもっとも印象に残った展覧会を3つ挙げてもらった。選んだ理由や今年注目したアート界の出来事についてのコメントと併せてお届けする。(展覧会の順位はなし)

「時間を過ごす家」会場風景 撮影:赤石隆明

小川希が選ぶ「ベスト展覧会」

(A)「例外アートウィーク」COPYCENTER GALLERY

(B)
「国東半島記憶博物館」(旧国見ユースホステル)

(C)「時間を過ごす家」BAMBA宮川邸

アートのメインストリームに生きていない自分に今回お声がけしていただいたことを踏まえ、3つの展覧会を挙げてみようと思います。まずは「例外アートウィーク」。美術館やコマーシャルギャラリーとは一線を画し、小規模であってもオリジナルな活動を展開するアートスペースを一望するためのウェブサイト「例外アートスペース」に名を連ねる複数のアートスペースの活動を一堂に紹介した特別週間。インフォメーションセンターとなった会場では、各スペース推薦の映像作品を一同に上映する例外映像祭や、「令和にオルタナティブ=例外は可能か?」と題したトークショーを開催。地下で蠢き出した新しい動きにドキがムネムネ。

トークイベント「令和にオルタナティブ=例外は可能か?」会場風景 撮影:東間嶺

つづいて「国東半島記憶博物館」。こちらは以前ユースホステルとして使われていた建物を使った展覧会。ひと昔前、こうした廃墟の建物を舞台とした展覧会って結構あった気もするのですが、最近あまり見かけなくなったのはアートの世界にもコンプライアンスという言葉が広く使われ出したせいでしょうか。ただこの展覧会、そんな流行はなんのその、見てはいけないものをこっそりと覗き見しているかのような、後ろめたさが常につきまとうものでした。あと気のせいかもしれないけど、会場に入った瞬間になぜだか肩が重くなりました。

「国東半島記憶博物館」会場風景 撮影:国東半島芸術文化祭2025実行委員会

そして最後は、青梅線の羽村駅から25分テクテク歩き、田んぼを超えて、突如現れる昭和モダンの邸宅と庭を舞台とした「時間を過ごす家」。半世紀以上前に建てられ、今は家主のいなくなった豪邸にて、現代アートという異物が点在していました。展示作品はどれも素晴らしかったけど、その舞台に残り続けている「いつかの誰かの時間」を同時に味わう。展示会場の一部にもなっていた広い庭で、子供たちがキャッキャッと遊んで笑う楽しそうな声が窓越しに聞こえてきて、こういうアート体験もあって全然いいよなと心が動かされました。

「時間を過ごす家」会場風景 撮影:赤石隆明

アートのメインストリームが、コマーシャルかポリティカルかで二極化しどちらも形骸化していくなかで、「マジでなんなのこれ?」といった我々の凝り固まった価値を揺さぶる動きがこの時代にも細々と生き残っていることに感謝。いや、まだ始まっちゃいねーよ、ってか。


年末特集「2025年回顧+2026年展望」は随時更新。

「2025年ベスト展覧会」
▶︎五十嵐太郎
▶︎
平芳裕子
▶︎和田彩花
▶︎能勢陽子
▶︎鷲田めるろ
▶︎鈴木萌夏
▶︎大槻晃実
▶︎小川敦生
▶︎山本浩貴
▶︎倉田佳子
▶︎小川希
▶︎番外編:Tokyo Art Beat編集部

小川希

おがわ・のぞむ Art Center Ongoing/ Art Center NEW代表。1976年東京都生まれ。2008年1月に東京・吉祥寺に芸術複合施設Art Center Ongoingを設立。2025年6月に横浜・新高島駅地下1階にArt Center NEWを設立。地域密着型アートプロジェクトTERATOTERAディレクター(2009年-2020年)、レター/アート/プロジェクト「とどく」ディレクター(2020年-2022年)、茨城県県北芸術村推進事業交流型アートプロジェクトキュレーター(2019年)、など多くのプロジェクトを手掛ける。2016年には国際交流基金のフェローシップを獲得し東南アジア9カ国83箇所のオルタナティブスペースのリサーチ、2021年には文化庁新進芸術家海外研修制度にてウィーンに1年間滞在しヨーロッパにおけるオルタナティブスペースのリサーチを行う。令和6年度 芸術選奨 文部科学大臣新人賞を受賞。