「ロエベ クラフテッド・ワールド展」(原宿)会場風景 撮影:編集部
(A)「今津景 タナ・アイル」(東京オペラシティ アートギャラリー)
(B)「玉山拓郎:FLOOR」(豊田市美術館)
(C)「ロエベ クラフテッド・ワールド展 クラフトが紡ぐ世界」(ヨドバシJ6ビルディング)
iPhoneの写真アプリをスクロールしながら、たしかに鑑賞時の記憶や感情が思い出せたのがこの3展だった。
2017年からインドネシアを拠点に活動する、今津景氏の初の大規模個展。過去の個展にも感動を受けてきたが、今回は生命力溢れるダイナミックさに圧倒された。自身のルーツである日本、そしていま拠点にしているインドネシア。脱植民地化や多文化主義、環境問題、ジェンダーにもつながる、両者の関係性やインドネシアの神話、生態系が作品に内包される。ここ数年、世界的に作家自身のルーツをもとに社会的なトピックを真摯に扱う展示は増えているが、そのなかでも今津氏の表現はしなやかさを放っていた。

2年前に友人の玉山から豊田市美術館の個展開催を知らされた当時は、それがどれだけ大役なのか想像もできず、いつも通り居酒屋で酒をかわし続け、全貌がわからぬままだった。それゆえに、「玉山拓郎:FLOOR」は良い意味で裏切りを感じる新鮮な体験だった。作品がよく見える午前中に着いたはずが、気づけば日が傾くまで空間に身を浸し、結局一日中美術館にいた。写真での伝達が先行する時代にあって、豊田市美術館でしか体感できない数々の瞬間が、確かにつくり出されていたと思う。

昨年、上海で開催した「ロエベ クラフテッド・ワールド展」の巡回展。ジョナサン・アンダーソン自身がキュレーションを担当。東京展に限定せず、上海展、そして3月にはパリのカール・ラガーフェルド旧邸宅で行われたプレゼンテーションを見に行った体験すべてを通して印象に残った。アンダーソンの手がける新生ディオールが、今後どのように文化や職人技の継承に携わるのかにも期待したい。

正直なところ、今年はロンドンを行ったり来たりしていたので、その前後で開催された日本での展覧会を見逃している。現地ではファッションウィークに合わせて、美術館でもファッションやカルチャーに関連する展覧会が活発だったことが印象に残った。たとえば、マイク・ケリーの個展と同時期にテート・モダンで開催されていたドラァグクイーンの回顧展、パリではルーヴル美術館の「Louvre Couture」、ヴァージル・アブローの大回顧展など。日本ではメゾンの大展覧会がブロックバスターとして扱われることもあるが、そうではない文化の継承の仕方もあるのではないだろうかと考えさせられる一年となった。
*年末特集「2025年回顧+2026年展望」は随時更新。
「2025年ベスト展覧会」
▶︎五十嵐太郎
▶︎平芳裕子
▶︎和田彩花
▶︎能勢陽子
▶︎鷲田めるろ
▶︎鈴木萌夏
▶︎大槻晃実
▶︎小川敦生
▶︎山本浩貴
▶︎倉田佳子
▶︎小川希
▶︎番外編:Tokyo Art Beat編集部
倉田佳子
倉田佳子