菊池寛実記念 智美術館併設 「カフェダイニング 茶楓 by 温故知新」外観 画像提供:カフェダイニング 茶楓 by 温故知新
美術館巡りの楽しみのひとつは、作品鑑賞の前後にゆっくりとカフェタイムを過ごすこと。建築美を感じながら味わうコーヒーや、展覧会にちなんだスペシャルメニューは、まさに五感で楽しむアート体験。今回は都内の美術館で特に魅力的なカフェを厳選して紹介する。
*各展覧会の会期・内容は予告なく変更になる場合があるため、お出かけ前には公式ウェブサイトをご確認ください。
東京都現代美術館は、1995年の開館以来、現代美術の拠点として数多くの人気展を手がけてきた。同館では質の高いアート体験とともに、充実したカフェ・レストラン施設も楽しむことができる。2階にある開放的なカフェ「二階のサンドイッチ」からは中庭を一望でき、現代アートの余韻に浸りながらゆっくりと時間を過ごすことができる。併設の「100本のスプーン」レストランは子連れファミリーにも対応しており、アート鑑賞後の食事にも最適だ。週末は混雑が予想されるため、平日の来館がおすすめ。現在は「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」展を開催中(7月21日まで)。夏から秋にかけては「開館30周年記念展 日常のコレオ」展(8月23日〜11月24日)が予定されている。


印象派と日本近代洋画を中心に、古代から現代アートまで約3000点のコレクションを所蔵している石橋財団によって運営されているアーティゾン美術館。同館1階にある「ミュージアムカフェ」からは、大きな窓越しに日本橋のオフィス街を一望できる。また飾り棚には、イタリアデザイン界の巨匠エットレ・ソットサス(1917〜2007)によるヴェネチアンガラス器を中心に、メンフィス時代の貴重な作品が展示されており、アートとデザインの両方を楽しめる贅沢な空間となっている。9月21日まで「オーストラリア現代美術 彼女たちのアボリジナル・アート」展を開催中。

南青山の根津美術館は、1941年に開館した日本・東洋の古美術品コレクションで知られる私立美術館であり、2009年に隈研吾の設計によってリニューアルオープンした。表参道駅から徒歩圏内という都心立地でありながら、館内の「NEZUCAFÉ」では、まるで京都の庭園にいるような静寂を感じられる特別な空間を提供している。大きなガラス窓からは手入れの行き届いた日本庭園が一望でき、四季の移ろいを感じながらカフェタイムを過ごせる。なお、カフェは美術館入館者のみ利用可能で、7月から開催される「唐絵 中国絵画と日本中世の水墨画」展(7月19日〜8月24日)を機に訪れたい。


東京都庭園美術館は、1933年竣工の旧朝香宮邸を活用したアール・デコ建築の名所で、建築の美しさと四季折々の日本庭園を同時に堪能できる贅沢なロケーションが魅力となっている。館内カフェ「Café TEIEN」は天井までガラス張りの開放的な空間で、白を基調としたインテリアに自然のやわらかな光が注ぎ込む居心地の良い環境だ。窓から眺める日本庭園はまるで一枚の絵画のような美しさで、目でも楽しめる彩り豊かなケーキや和スイーツ、日本茶のメニューが充実している。8月24日まで同館の建築を楽しめる「建物公開2025 時を紡ぐ館」展を開催中。


丸の内の三菱一号館美術館は、1894年に建設された三菱一号館を2009年に復元し、翌年に開館した赤レンガが特徴的な美術館だ。館内の「Café 1894」では、明治時代の銀行営業室を可能な限り忠実に再現した重厚な空間で、まるでタイムスリップしたような気分を味わえる。高い天井とクラシカルな装飾が印象的で、とくに夜のライトアップされた空間は格別の美しさだ。丸の内散策の起点としても最適な立地で、現在開催中の「ルノワール×セザンヌ ―モダンを拓いた2人の巨匠」展(9月7日まで)の鑑賞とあわせて訪れたい。


文京区の住宅街に佇む弥生美術館・竹久夢二美術館は、1984年に開館した挿絵画家や竹久夢二の作品を専門とする私立美術館だ。大正ロマンの世界観を色濃く残す同館に併設された「夢二カフェ 港や」では、夢二の作品世界を彷彿とさせるレトロで可愛らしい内装が印象的で、大正時代にタイムスリップしたような気分を味わえる。現在、弥生美術館では「ニッポン制服クロニクル ー昭和100年! 着こなしの変遷と、これからの学生服ー」展を、竹久夢二美術館では「夢二でたどるアール・ヌーヴォーとその周辺 ―明治~大正の出版美術にみる装飾趣味―」展をそれぞれ9月14日まで開催中だ。
「カフェダイニング 茶楓 by 温故知新」は虎ノ門のオフィス街に位置し、落ち着いた空間デザインが印象的だ。ガラス張りの開放的な設計により、都市の喧騒を忘れさせてくれる静謐な時間を提供している。なお、カフェのみの利用も可能で、ランチタイムには予約をおすすめしたい。現代の陶芸作品を展示する菊池寛実記念 智美術館に併設されており、同館では9月28日まで「鳥々 藤本能道の色絵磁器」展を開催中。


住友コレクションで知られる泉屋博古館東京に併設された「HARIO CAFE」は、コーヒー器具を扱うブランドHARIOが手がけるスタイリッシュなカフェだ。六本木一丁目の落ち着いたエリアにあるこの空間では、中国古美術や近代絵画の鑑賞後、こだわりのコーヒーとともに展覧会の余韻に浸ることができる。ガラス張りの明るい店内は規模こそコンパクトだが、それゆえに落ち着いた雰囲気でちょっとした休憩には最適だ。ドリップコーヒーの香りが空間に漂い、コーヒー好きにはたまらない環境で、展覧会鑑賞後の一息つく場所として重宝される隠れ家的存在となっている。7月27日まで「死と再生の物語(ナラティヴ) ―中国古代の神話とデザイン」展を開催中。


松方コレクションをもとに1959年に設立された国立西洋美術館は、ル・コルビュジエ設計の本館が世界文化遺産に登録された名建築で知られている。「CAFÉ すいれん」は、中庭に面したガラス張りの明るい印象的な空間だ。人気メニューの「ル・コルビュジエ プレート 」はル・コルビュジエが設計した「国立西洋美術館本館」が四角いプレートで表現されており、視覚的にも楽しめる。観覧券なしでも利用可能なため、上野散策の際にも気軽に立ち寄ることができる。7月に開幕する「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」展(7月1日〜9月28日)とあわせて訪れたい。


天王洲アイルに位置するWHAT MUSEUMは、寺田倉庫が運営する現代アートと建築のミュージアムだ。同エリアにある「WHAT CAFE」は、アートを身近に感じられるユニークなアートギャラリーカフェとなっている。店内では定期的にアート作品の展示販売が行われており、コーヒーを飲みながら現代アートに触れられる貴重な体験ができる。天王洲アイルの散策とあわせて、新しいアート体験を楽しんでみてはいかがだろうか。

