アメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867〜1959)の展覧会「帝国ホテル二代目本館100周年 フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」が、豊田市美術館で10月21日〜12月24日に開催される。日本初公開となる建築ドローイングや図面の数々を含む、約420点を展示。最新のライト研究に基づく内容構成となる。2024年1月11日〜3月10日パナソニック汐留美術館、2024年3月20日〜5月12日青森県立美術館に巡回予定。
監修は ケン・タダシ・オオシマ(ワシントン大学建築学部教授)、特別アドヴァイザーはジェニファー・グレイ (フランク・ロイド・ライト財団副代表、タリアセン・インスティテュート・ディレクター)。
本展のポイントのひとつは、ライトのキャリアの中心軸に帝国ホテルを据え、その魅力に迫ることだ。
「カウフマン邸(落水荘)」や「グッゲンハイム美術館」で知られるライトは、「帝国ホテル二代目本館」や「自由学園明日館」を手がけ、熱烈な浮世絵愛好家の顔も持つ、日本と深い縁で結ばれた建築家。
帝国ホテルが落成したのは、いまからちょうど100年前の1923年、関東大震災の発生当日にあたる。災禍を生き延びたことで、ライトに大きな名声をもたらしたこの帝国ホテルは、広大な敷地に客室のほか劇場や舞踏会室など様々な施設を備えた、それ自体が都市であるかのような壮大なプロジェクトだった。最初の構想から実現まで10 年の歳月を要し、そのなかにはアメリカ中西部からラテンアメリカ、ヨーロッパ、日本まで、ライトが経験した様々な風土と文化から取り入れられた要素が凝縮されている。帝国ホテルはライトにとって結節点ともいえ、ここでの経験やアイデアは、後のライトの建築や都市計画にも形を変えて様々に展開されていった。
なお愛知県犬山市にある博物館 明治村には旧帝国ホテルの中央玄関が展示されているので、合わせて訪れるのも良いだろう。
2012年にフランク・ロイド・ライト財団から図面をはじめとする5万点を超える資料がニューヨーク近代美術館とコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館に移管され、建築はもちろんのこと、芸術、デザイン、著述、造園、教育、技術革新、都市計画に至るライトの広範な視野と知性を明るみにする調査研究が続けられてきた。
本展ではこうした近年の研究成果をふまえ、多様な文化と交流し常に先駆的な活動を展開したライトの姿を明らかにする。日本初公開となる建築ドローイングや図面の数々を紹介。緻密で繊細、構図にも工夫を凝らしたライトの建築ドローイングを間近で見ることができる貴重な機会となる。
また、本展では、ライトが主宰した実践教育の場「タリアセン・フェローシップ」で学んだ磯矢亮介の協力のもと、会場内にライトが提言した「ユーソニアン住宅」の一部を再現する。 ライトの建築の空間スケールを実際に体験することでライトへの理解が一段と深まるだろう。
谷口吉生による独創的な建築を誇る豊田市美術館で、日本とも縁深いライトの新たな一面を知ることができる絶好の機会だ。