4月26日、「アートスペース福寿園」が福寿園京都館7階にオープンする。伝統を大切にしながら一味違った体験ができるカルチャースペースとして、お茶を原点に、伝統工芸から現代美術、フォトグラフィーやインスタレーションなど幅広いジャンルの企画や展覧会を開催する。
福寿園は寛政2年(1790年)、山城国上狛(現京都府木津川市山城町)にて福井伊右衛門が茶商として創業した老舗茶舗。創業以来、宇治茶の伝統を守り育てるとともに、お茶づくりを気軽に体験できる施設を各所に開設するなど、お茶の素晴らしさを伝える取り組みを行ってきた。「アートスペース福寿園」は、日常生活のなかでアートを楽しみ、お茶の文化を見つめなおす機会を京都で改めて作りたいという想いから始まった。
アートスペースのデザインは国立国会図書館西館、森鴎外記念館の設計、ヘルシンキコンサートホールの国際コンペ優秀賞受賞など、国内外で数々の建築アワードを受賞した建築家・陶器二三雄が設計。和をコンセプトに構成された京都本店の建築コンセプトに相応しい、アート作品が輝き、心和む 「中庸」の空間だ。
こけら落としの展覧会には、現代アーティスト戸田沙也加の個展「茶花礼賛」が開催される。
戸田沙也加は、土地で生まれ育つ植物や植物と人、文化/伝統を研究し独自の表現で作品を展開してきた。美の表情は様々で自然の中の醜さには美の本質を持つプロセスがあるという「醜美」を追求し、2023年にはKANA KAWANISHI GALLERYで個展『生い茂る雑草の地に眠る』を開催。絵画と写真を組み合わせた展示構成で、アーティストとしての新境地を切り開き、高い評価を受けた。
本展はすべて新作発表。作品制作において戸田は茶園を何回も訪れ、お茶の花にフォーカスした。茶葉を作る工程で花が満開になると、お茶の味や風味が落ちるために疎まれている白く可憐な花。本来植物が成長する過程で自然に生まれるものが人の手によって強制的に排除されてしまう儚さに醜美を見出し、絵画とインスタレーションでお茶の花を表現している。
2022年秋に宇治の黄檗宗萬福寺に滞在した際、戸田沙也加は萬福寺の塔頭獅子林院から巨大な壺を譲り受けた。萬福寺で始めた自然を追求するフィールドワークは、茶園のリサーチの延長線上にあり、そこで取得した知識をペインティングと立体作品に反映させる。
アートスペース福寿園でお茶を嗜みながら、戸田が表現する“醜美”の世界に浸りたい。
「茶花礼賛」
会期:4月26日~6月25日
営業日:木曜日~日曜日
時間:11:00~17:30
場所:「アートスペース福寿園」
〒600-8005
京都市下京区四条通富小路角
京都館(福寿園京都本店)7階
TEL:080-5652-6266