森ビル株式会社が運営し、11月24日に開館する「麻布台ヒルズ」。その文化発信の中核となる「麻布台ヒルズギャラリー」の開館記念として、「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」が11月24日から2024年3月31日まで開催される。
アイスランド系デンマーク人であるオラファー・エリアソン(1967年デンマーク生まれ)は、ジャンルを横断する多様な作品だけでなく、環境問題などの社会的課題への積極的な取り組みでも世界的に注目されているアーティスト。大型インスタレーションをはじめとするエリアソンの作品は、自然現象や、その要素である色や光、動きが導く知覚体験を通して、世界の在り方や自然との関係性についての新たな解釈をうながす。2020年には東京都現代美術館で個展「ときに川は橋となる」を開催し、大きな注目を集めたことも記憶に新しい。
麻布台ヒルズには開業に合わせ、エリアソンによる新作のパブリックアート《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》(2023)が設置される。本展は、本作で取り組んだ主題を軸に、新作インスタレーションや水彩絵画、ドローイング、立体作品などを展示する。
なかでも注目は、水を用いた大型インスタレーション《瞬間の家》だ。天井高5m、全長20mを超える暗闇の空間にストロボの光で瞬間的に照らされ展示される本作は、2010年に発表された作品を本展に合わせ再構成したもの。水と光というシンプルな要素によった無限に生み出される水の曲線の抽象表現は、エリアソンが長年取り組んでいる幾何学形体の研究や自然素材に内在する美しさへの理解をうながす。
また、世界初公開となる新作《呼吸のための空気》(2023)を含む、日本初展示作品15点を展示。《呼吸のための空気》 は森JPタワーに設置されたパブリックアート《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》と同じモジュールとリサイクル素材を使用。これら2つの作品は、エリアソンが再生金属に特化して制作した初めての作品であり、スタジオのサステナビリティへの継続的な取り組みにおける重要なマイルストーンといえるものだ。
ほかにも、カタールの砂漠で太陽光や風力などの自然エネルギーで制作したドローイング・シリーズ、振り子の動力のみで稼働し、会場内でドローイングを生成するドローイングマシン《終わりなき研究》(2005)など、日本初公開の作品群が出展されます。
ベルリンにあるオラファー・エリアソンのスタジオに専用のキッチンがあることは有名だ。週に3日食事が提供され、スタジオのチーム全員と、そのときたまたま訪れたゲストやコラボレーターが家庭的なスタイルで分かち合う。
麻布台ヒルズギャラリーカフェでは、展覧会の会期中限定で、そんなスタジオ・オラファー・エリアソン・キッチンとの日本初コラボレーションが行われる。エリアソンのスタジオに日本からシェフを派遣し、本展のためのオリジナルメニューを共同開発。スタジオの創作的な家庭料理を楽しみながら、彼らの姿勢や環境に対する考え方に触れることができる。
オラファー・エリアソンのメッセージ
すべてのものごとは、たとえ安定しているように見えるものでさえ、大きなスケールで見れば動きのなかにある。私たちの惑星、太陽、そして太陽系は、天の川を駆け巡り、中央のブラックホールを取り囲むように動いている。同時に、よくよく目を凝らせば、この世界は種々の構成要素から成り立っており、それらはまだ見ぬ「現実」の足場でもある。今のところ、私たちは夢のレベルでしかこれにアクセスできない。アートとは、想像力を駆使して、不可能を可能にし、見えないものを見えるようにすることなのだ。
本展の企画は、片岡真実(森美術館 館長)、德山拓一(森美術館 アソシエイト・キュレーター)。
森美術館では同時期の10月18日~2024年3月31日に「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」が開催されているので、合わせて足を運べば、アートとエコロジーというテーマをより深く体感することができそうだ。
東京に誕生する新たな文化芸術の発信拠点。その記念すべきオープニングに期待が高まる。