
会場風景
渋谷区立松濤美術館で「路上、お邪魔ですか?」展が開催されている。会期は11月23日まで。
1986年、赤瀬川原平や藤森照信らによって結成された路上観察学会が、今年で創設40周年を迎える。本展はその節目を機に企画され、路上という公共空間をめぐる自由と排除の両面を問い直すものだ。金沢21世紀美術館での開催を経て渋谷会場に巡回し、都市と自然が意図せず生み出した状況をユーモアとともに見出してきた同学会の実践を軸に、現代美術から歴史資料、公園の遊具、大道芸、銭湯までを横断しながら、路上における「自由」と「邪魔」の共存を探っていく。担当学芸員は同館の木原天彦。
会場の渋谷区立松濤美術館は、白井晟一の設計による分厚い壁で知られる美術館だ。木原は、その堅牢さをあえて崩すように、展覧会を建物の外側から始める構成にしたという。実際に展示は同館の渋い外壁からスタートする。

訪れた人がまず目にするのは、日常への丹念な観察を通じて、読者をいつのまにか不思議な世界へと連れ出してきたマンガ家panpanyaの作品だ。描かれているのは、街角で待ち合わせたふたりのキャラクターが、どこかへ出かけていくだけの何気ない場面。ところがよく見ると、コマが進むたびに背景の建物が姿を変えている。同じ時間を生きているように見えるふたりの背後で、じつは長い年月が流れているのだ。こうした変化に気づいて初めて見えてくるものこそ、路上の見過ごされがちな価値とも言える。

ロビーに置かれているのは、高松市に残されていた大正時代の道路標識だ。全国で道路標識の様式が統一されていった最初期を伝える資料であるはずだが、つい1年ほど前までは路上に放置されたまま、ほぼ100年近くを野ざらしで過ごしていたという。車と歩行者、路上を共有するふたつの存在は、片方が便利になれば他方が不便になるという関係にある。そのせめぎ合いの構造こそが面白いと、木原は説明を加える。

外壁のほかに、館内にも見慣れない光景が広がる。地下2階から地上2階まで4階層を貫く吹き抜けのブリッジに置かれているのは、1台のガードレールだ。Chim↑Pom from Smappa!Groupが2017年の「アジアン・アート・ビエンナーレ」で発表したプロジェクト作品《道(Street)》のアーカイヴの一部である。本プロジェクトは、国立台湾美術館の敷地外から館内までアスファルトの「道」を通し、デモやブロック・パーティを重ねながら公共の空間として「育て」ていった。会場には当時の記録映像やバナー、実際に使われた品々とともに、道を規制し、時に歩み寄った美術館側とのやり取りの記録も展示されている。
