松山智一 People With People © Tomokazu Matsuyama
現代美術家の松山智一の作品が、弘前れんが倉庫美術館で展示される。今回、日本の美術館では初の個展となる。ニューヨークのギャラリーで開催された初個展から14年、精力的に作品発表を続け、年々活動の幅を広げる松山の様々な側面に触れられる機会となりそうだ。
現在は、ブルックリンを拠点に活動する松山。彼の作品には東洋と西洋、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素を見ることができる。これは日本とアメリカの両国で育った、松山自身の経験や情報化の中で移ろいゆく現代社会が反映されているからだ。
日本では初公開となる立体作品2点《Mother Other》《This is What It Feels Like ED.2》(ともに2023)は、見どころだろう。嵌玉眼(かんぎょくがん)や京都の截金(きりかね)職人による截金文様などの伝統技法と、FRPにポリウレタン塗装という、新旧の彫刻技法が融合されることで生まれた。また遠隔でスタッフたちとの制作を試みた《Cluster 2020》(2020)やひとりで制作した《Broken Train Pick Me》(2020)など、コロナ禍を通じて松山が創作活動の意味を問い続けた、近年の作品群も一望できる。
日常的に行っている伝統的な美術に関するリサーチと、日常生活の中で収集した大量のイメージ群とが、自在に組み合わされることで生まれる松山の作品。1つの作品が生まれるまでに10~20にも及ぶような古今東西のイメージのレファレンスがあり、それらが松山の手によって組み合わされていく……、解き明かされる制作過程を目の当たりにしたい。