公開日:2022年7月6日

リヒター作品が見られる全国7か所。ペインティングやドローイング、ガラス作品まで

東京国立近代美術館で開催中の大規模個展が注目を浴びるゲルハルト・リヒター。都内の美術館やギャラリーはもちろん、関西や離島の展示作品まで紹介する

ゲルハルト・リヒター 抽象絵画(648-1) 1987 国立国際美術館蔵 © Gerhard Richter Courtesy Wako Works of Art

東京国立近代美術館で10月2日まで開催中の、国内の美術館では16年ぶり、東京では初となる「ゲルハルト・リヒター展」(10月15日~2023年1月29日まで豊田市美術館に巡回)。本展の会期中にあわせて全国7か所で見ることのできるリヒター作品を紹介する。

「MOMATコレクション」(東京国立近代美術館)

東京国立近代美術館で開催中の「ゲルハルト・リヒター展」を見た後は、同時開催の展覧会「MOMATコレクション」をお忘れなく。《抽象絵画(赤)》(1994)、《シルス・マリア》(2003)、《STRIP (923-33)》(2012)、《9つのオブジェ》(1969)が2階11室にて展示されている。

会期:〜10月2日
公開作品:《9つのオブジェ》(1969)(7月24日まで公開)、《抽象絵画(赤)》(1994)、《シルス・マリア》(2003、寄託作品)、《STRIP (923-33)》(2012)(7月26日〜10月2日に公開)

ゲルハルト・リヒター 抽象絵画(赤) 1994 © Gerhard Richter 2022(20042022)

「ゲルハルト・リヒター Drawings 2018-2022 and Elbe 1957」(WAKO WORKS OF ART、東京都)

六本木のWAKO WORKS OF ARTでは「ゲルハルト・リヒター Drawings 2018-2022 and Elbe 1957」展が開催中。本展では2018年から現在までの新作を含むドローイング18点に加え、65年前に制作された版画をエディションで蘇らせた31点組の作品《Elbe[Editions CR: 155]》(2012)のエディション版が公開される。リヒターは2017年に油彩画制作から身を引いたが、ドローイングは現在も精力的に続けている。最新作と半世紀以上前のリヒター作品を同じ空間で見られる絶好の機会だ。
なお本展は事前予約制。訪れる際は予約サイトを必ずチェックしておこう。

会期:〜7月30日
公開作品:ドローイング18点(2018〜22)、《Elbe[Editions CR: 155]》(2012)

ゲルハルト・リヒター 3.1.2022 2022 紙に鉛筆、カラーインク 20.7 × 29.3 cm ©︎ Gerhard Richter Courtesy WAKO WORKS OF ART

「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」(国立西洋美術館、東京都)

先日リニューアルオープンを迎えた国立西洋美術館で開催中のリニューアル記念展「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」ではフォト・ペインティングの作品《雲》(1970)が公開。第1章「空を流れる時間」にて、クロード・モネ《舟遊び》(1887)と併置されている。彼らの描く雲を見比べながら、約100年間での絵画を取り巻く環境の変遷に思いを馳せてみてはいかがだろうか。

会期:〜9月11日
公開作品:《雲》(1970)

ゲルハルト・リヒター 雲 1970 カンヴァスに油彩 フォルクヴァング美術館蔵 © Gerhard Richter 2022 (13012022) © Museum Folkwang, Essen Photo: Jens Nober.

「モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」(ポーラ美術館、神奈川県)

ポーラ美術館の開館20周年記念展「モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」では、モネとリヒターの作品を横並びで見ることができる。公開されているリヒターの作品は、《抽象絵画(649-2)》(1987)。近代絵画を中心としてきた同館のこれまでのコレクションを代表するモネの印象派絵画と、現代美術の収集に力を入れ始めたこれからのコレクション形成を象徴するリヒターのアブストラクト・ペインティングの並びに、同館のこれからの活動への期待が高まる。展示のフォトレポートはこちら

会期:〜9月6日
公開作品:《抽象絵画(649-2)》(1987)

右からクロード・モネ《​​睡蓮の池》(1899)とゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》(1987)©︎ Ken KATO

「国立国際美術館コレクション 現代アートの100年 ハロー、アート!世界に夢中になる方法」(大分県立美術館)

大分県立美術館では、「国立国際美術館コレクション 現代アートの100年 ハロー、アート!世界に夢中になる方法」が開催中。関西最大規模の美術館のひとつ、国立国際美術館の豪華なコレクションを存分に鑑賞することができる。公開中のリヒター作品《抽象絵画(648-1)》(1987)は第3章の展示空間中央に配され、鮮やかな色使いも相まってひときわ大きな存在感を放っている。リヒターのアブストラクト・ペインティングを九州で見られるまたとない機会だ。

会期:〜8月21日
公開作品:《抽象絵画(648-1)》(1987)

ゲルハルト・リヒター 抽象絵画(648-1) 1987 国立国際美術館蔵 © Gerhard Richter Courtesy Wako Works of Art

ベネッセハウス ミュージアム(直島、香川県)

国内有数のアートスポットとして著名な瀬戸内海・直島。美術館とホテルが一体となった施設であり、建築を安藤忠雄が手がけたことでも知られるベネッセハウスミュージアムでは地階にてリヒター作品《ベティ》(1991)が通年展示されている。ベティとは、リヒターの娘バベッテの愛称であり、本作はリヒターが11歳の頃の彼女を撮影した写真をもとに描かれたフォト・ペインティングのプリント版だ。瀬戸内国際芸術祭に訪れる際は、ぜひ合わせて見ておきたい。

通年公開
公開作品:《ベティ》(1991)

ゲルハルト・リヒター ベティ 1991

「14枚のガラス/豊島」(豊島、愛媛県)

愛媛県上島町、瀬戸内海に浮かぶ豊島(とよしま)では、《14枚のガラス/豊島》が1ヶ月限定で公開。本作はリヒターのガラス立体作品としては、最新作にして最大。夕日が美しく、自然あふれる豊島にリヒターが惚れ込んだことが展示のきっかけとなった。竹林に囲まれた建物も、リヒターのアイデアとデザインに基づいて建てられたもの。季節や天候、時間の経過で光の加減が変化する空間で、リヒター作品を味わってみてはいかがだろうか。
なお島へのアクセスは、因島土生港(広島県尾道市)か弓削港(愛媛県上島町)から町営の定期船が1日2便運航している。詳細は上島町のアクセスマップを確認してほしい。

会期:9月3日〜25日、8:45〜18:00(土・日・祝日限定)
公開作品:《14枚のガラス/豊島》

《14枚のガラス/豊島》を展示する豊島内の建物
ゲルハルト・リヒター 14枚のガラス/豊島



浅見悠吾

浅見悠吾

1999年、千葉県生まれ。2021〜23年、Tokyo Art Beat エディトリアルインターン。東京工業大学大学院社会・人間科学コース在籍(伊藤亜紗研究室)。フランス・パリ在住。