公開日:2026年8月10日

舞台芸術祭「秋の隕石」をお得に見よう。山城知佳子、花形槙らによる「オンラインミューぽん」参加の4演目を紹介

会期は10月9日から11月3日まで。13の上演プログラムをはじめ、ワークショップやレジデンシーなどを展開する

左上から時計回りに:「花形槙 『エルゴノミクス胚』」、「クリストファー・リューピング『渇望』サラ・ケイン作」、「山城知佳子 『リコーリング(ス) ― シアトリカル・バージョン』」、「シアター能楽 英語能『青い月のメンフィス』」

10月9日から11月3日まで、東京芸術劇場を中心に開催される舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」。国内外の多彩なアーティストによる舞台作品が集まる本芸術祭から、Tokyo Art Beat有料会員向けのチケット割引サービス「オンラインミューぽん」でお得に鑑賞できる4演目を紹介する。

「ミューぽん」とは?

「ミューぽん」は、Tokyo Art Beat有料会員限定のチケット割引サービス。これまでは会場の窓口で当日券を購入する際のみ利用できましたが、e+(イープラス) を使って事前購入が可能になりました。

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割引のお得さはそのままに、もっと使いやすくなりました。

注目の最新舞台芸術祭「秋の隕石」

「秋の隕石」は、東京都内全域で開催される「東京舞台芸術祭 2026」の主要プログラムのひとつ。2026年度から東京芸術劇場舞台芸術部門の芸術監督に就任した演劇作家・小説家の岡田利規がアーティスティック・ディレクターを務め、「新たな芸術の創造」「海外発信」「人材育成」をミッションに掲げる。2026年は13の上演プログラムをはじめ、ワークショップやレジデンシーなどを展開する。

シアター能楽 英語能『青い月のメンフィス』

最初に紹介するのは、国境も時代も越えて能の可能性を広げる、シアター能楽による英語能『青い月のメンフィス(Blue Moon Over Memphis)』。

青い月のメンフィス 撮影:デビッド・サタースキー

シアター能楽は、能を学ぶ英語話者によって2000年に設立され、国際的に活動を続けてきた。本作は、アメリカの劇作家デボラ・ブレヴォートが「キング・オブ・ロックンロール」ことエルヴィス・プレスリーを題材に執筆した戯曲をもとにした創作能だ。

青い月のメンフィス

物語の軸となるのは、エルヴィスの熱烈なファンである女性ジュディ。彼の命日に墓を訪れたジュディが、青い月の光に導かれ、亡霊となったエルヴィスと出会う。死者と生者が邂逅する夢幻能の形式に、ブルースやゴスペル、エルヴィスのヒットナンバー、デニム素材の装束など、アメリカ文化のモチーフが交錯する。

青い月のメンフィス 撮影:デビッド・サタースキー

能の伝統的な形式を守りながら、言語や文化の境界を大胆に横断する本作。同時上演される新作英語狂言『節度の報い(The Rewards of Humble Abstinence)』とともに、能という形式を新たな角度から体験できそうだ。

会期:10月10日〜11日
会場:東京芸術劇場 プレイハウス

クリストファー・リューピング『渇望』サラ・ケイン作

ドイツ語圏の現代演劇を牽引する演出家のひとり、クリストファー・リューピング。その作品が、「秋の隕石」で初めて日本上演される。

渇望 © Thomas Aurin

原作は、イギリスの劇作家サラ・ケインが1998年に発表した『CRAVE(渇望)』。明確なストーリーを持たず、A、B、C、Mというアルファベットで示された4人の登場人物が、詩のように断片的な言葉を交わしていく。愛や欲望、不安、暴力、孤独といった感情がむき出しになった、ケイン晩年の代表作のひとつだ。

渇望 © Thomas Aurin

ケインの戯曲との出会いをきっかけに演劇の道へ進んだリューピングは、この作品に原作には存在しない「5人目」を登場させる。その人物は舞台上の椅子に座り、一言も発さない。ほかの4人から投げかけられる言葉を受け止め、その表情だけがスクリーンに大きく映し出されていく。

渇望 © Thomas Aurin

約30年前に書かれた戯曲に刻まれた人間の欲望や恐れ、暴力性、そして救いを求める切実さを、「いま、ここ」の観客へと接続するリューピングの演出に注目したい。

会期: 2026年10月17日〜10月18日
会場: 東京芸術劇場 プレイハウス

花形槙『エルゴノミクス胚』

人間が椅子に合わせるのか、それとも椅子が人間に合わせるのか。パフォーマンスやメディアアートの領域で活動する花形槙による『エルゴノミクス胚』は、人間とテクノロジーの関係を身体から問い直す異色のパフォーマンスだ。

エルゴノミクス胚 © Keita Otsuka

花形が着目するのは、機器や環境を人間の身体に適したかたちへと設計する「エルゴノミクス(人間工学)」という考え方。しかし本作では、その関係を反転させ、人間のほうが技術に適応し、さらには「椅子になろうとする」という試みが繰り広げられる。

エルゴノミクス胚 © Keita Otsuka

花形自身を含む実践者たちはヘッドマウントディスプレイを装着。自分の身体がAIによってリアルタイムで「椅子らしき図像」へ変換されていく映像を見ながら、微細に姿勢を変化させ、椅子への変態(メタモルフォーシス)を試みる。

本作は「秋の隕石2025東京」の企画公募に採択され、『エルゴノミクス胚・プロトセル』として行われた公開実験を経て発展したもの。今回はAIやモーションキャプチャなどのデジタル技術を新たに取り入れ、劇場空間そのものを「凝視させる装置」としてとらえ直す。テクノロジーによって人間の身体や想像力はどこまで変わりうるのか。その奇妙な変態のプロセスを目撃したい。

会期:10月29日〜11月1日
会場:東京芸術劇場 シアターイースト

山城知佳子『リコーリング(ス) ― シアトリカル・バージョン』

沖縄の歴史や政治、文化を、映像や写真、パフォーマンスを通して探求してきた山城知佳子。『リコーリング(ス)―シアトリカル・バージョン』では、いくつもの声と身体、そして沈黙を重ねながら、戦争の記憶が過去だけに属するものではないことを観客に問いかける。

リコーリング(ス)―シアトリカル・バージョン Photo by Hideaki Higa © Chikako Yamashiro 那覇文化芸術劇場なはーと公演記録

空間に散りばめられたスクリーンから響くのは、証言、再現、演奏、漫才など、様々な声と身振り。映像には、沖縄戦後史の記憶をその身に刻む人々に加え、山城の父である小説家・山城達雄が戦前・戦中を過ごした南洋パラオの風景も登場する。異なる時代や場所の記憶が並置され、ひとつの歴史へ回収することのできない複数の経験が立ち上がっていく。

リコーリング(ス)―シアトリカル・バージョン Photo by Hideaki Higa © Chikako Yamashiro 那覇文化芸術劇場なはーと公演記録

本作は2025年、アーティゾン美術館でインスタレーションとして発表。その後、那覇文化芸術劇場なはーとで劇場空間に合わせて再構成され、「秋の隕石2026東京」ではさらに東京芸術劇場に応答するかたちでアップデートされる。

特徴的なのは、観客がひとつの場所に座って作品を眺めるのではなく、空間を移動しながら鑑賞すること。複数の記憶や声、身体に取り囲まれるうちに、見る側の立場や感覚もまた揺さぶられていく。美術館での展示から劇場へと姿を変えてきた山城作品が、東京でどのような経験を生み出すのか期待したい。

会期:10月30日〜11月3日
会場:東京芸術劇場

伝統芸能とアメリカ文化が出会う英語能から、サラ・ケインを再解釈する現代演劇、AIと身体の関係を問うパフォーマンス、そして戦争と記憶をめぐる山城知佳子の作品まで。「秋の隕石」の幅広さを象徴するような4演目が並ぶ。

舞台芸術は、展覧会とはまた違って「その日時、その場所」でしか出会えないもの。会員限定「オンラインミューぽん」を活用して、この秋、気になる一作を劇場で体験してみてはいかがだろうか。

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