
「エットレ・ソットサス─魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」(アーティゾン美術館)会場風景 撮影:灰咲光那
行きたい展覧会を、どうやって見つけていますか? お気に入りの美術館・ギャラリーのウェブサイトをチェックしたり、SNSで偶然流れてきた展示風景に惹かれたり、友人の口コミを頼りにしたり。展覧会との出会い方は、人によって意外と違うものです。
Tokyo Art Beatではサイトリニューアルにあわせて、日頃から数多くの展覧会に足を運び、それぞれの視点でアートを見つめる5人に、「私の展覧会の見つけ方」を聞きました。
▶︎はむぞう(アートウォッチャー)
▶︎akemi(美術ライター)
第2回に登場するのは、美術ライターのakemi。展覧会のテーマや作品の色彩に合わせた着物をまとって会場を訪れ、その装いとともに展覧会の魅力をSNSで発信しています。年間に足を運ぶ展覧会の数は多く、その選び方には独自の視点が。どのように展覧会を見つけているのかを聞いてみました。
美術館・博物館やギャラリー、配信サイトから届くプレスリリースや案内を基本に、各館の公式サイト、展覧会の公式SNS、美術専門メディア、SNSなどを横断して情報を集めています。
美術ライターとして展覧会を見る場合は、一般的な人気や話題性だけではなく、展覧会の企画意図や出品作品、所蔵先、キュレーターの視点などを確認します。とくに「このテーマを、なぜいまこの館が取り上げるのか」という企画の必然性に注目しています。
また、実際に足を運んだ展覧会や美術館で得た情報から、次に見る展覧会を見つけることも多いです。作品を見て興味を持った作家を追ったり、ある美術館の企画展から、その分野や関連作家へと関心を広げたりします。
基本的に、好むと好まざるにかかわらず、可能な限り多くの展覧会に足を運ぶようにしています。重視するのは「企画の切り口」です。有名作家の展覧会だから行くというよりも、どの作品を、どのような視点で組み合わせ、何を見せようとしているのかを重視します。同じ作家でも、切り口によって展覧会の意味が大きく変わるからです。
次に重視するのが出品作品です。国内ではなかなか見ることのできない作品が来るのか、まとまった作品数を見ることができるのか。そのうえで、会場の建築や空間、展示構成も判断材料になります。とくに美術館そのものが好きなので、「この作品をこの空間で見る意味があるか」という点も気になります。
未知の作家の展覧会には積極的に行くようにしています。ネットの評判やSNSでの反応も参考にします。
東京都庭園美術館:アール・デコ建築の装飾空間と展示作品が密接に響き合い、ここでしか味わえない完成された鑑賞体験が得られるため。和風庭園や茶室があるも魅力的。
根津美術館:静謐な展示空間と豊かな庭園の美しさが調和しており、日本の美意識を空間全体で体感できるため。鑑賞後は庭園を散策します。
「エットレ・ソットサス —魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」(アーティゾン美術館)
ソットサスと言えば、80年代のポップでポストモダンな「メンフィス」のイメージが先行しがちですが、初期から晩年に至る思考の軌跡や素材への探求を重層的に体感でき、見方が大きく変わりました。プロダクトが放つ躍動感や色彩のグラデーションが空間全体と共鳴しており、現地で体感する価値を強く感じた企画でした。
「スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照」(東京ステーションギャラリー)
日本ではこれまでほとんど紹介されてこなかった画家の全貌に光を当てた、まさに「行ってよかった」と感じる企画でした。訪日時の作品がとくによかったです。約150点に及ぶ日本初公開の作品群は圧倒的で、レンガ壁の空間とヴァルザーの持つ静謐でどこか退廃的な世界観が見事に調和していました。
「長谷川潔展 ―― パリに生きた銅版画家の軌跡」(パナソニック汐留美術館)
長谷川潔については知っていましたが、これほどひとりの作家の作品世界に深く入り込めるとは、実際に会場で見るまで想像していませんでした。メゾチントによる深い黒と繊細な白の表現は画像では伝わりにくく、実物を見る意味を強く感じました。19世紀以前の版画やパリで交流した同時代の作家の作品も含めた構成によって、彼の位置づけが立体的に見えてきた点もよかったです。
(ありきたりですが……)
ルーヴル美術館の約50点に加え、レオナルド・ダ・ヴィンチの《女性の肖像(美しきフェロニエール)》が初来日するため、非常に注目しています。
テキスタイルやプロダクトのデザインと、アール・デコ建築という特徴的な展示空間との関係性に期待しています。
「東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」(東京都美術館)
近代絵画の名品が集結しますし、開館100周年という記念すべき節目にどのような空間演出と文脈で提示されるのかが楽しみです。
「テート美術館 ターナー展──崇高の絵画、現代美術との対話」(国立西洋美術館)
ターナーと現代美術を「光」「自然」「崇高」というテーマでつなぐ構成に注目しています。
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最近は撮影可能な展覧会が増えましたが、撮影可否が公式サイトに載っていないことが多いです。SNS時代ですから、写真を撮りたい方も多いはず。展覧会を探す際に「撮影可能かどうか」がわかるタグがあると便利なので、今後ぜひ取り入れてほしいですね。
akemi
美術ライター。WEBメディア「きものと」でコラム「きものでミュージアム」連載中。「美術展ナビ」外部ライター。鑑賞スタイルは、展覧会のテーマや作品の色彩に合わせた着物で足を運ぶ独自のもの。Instagram(@iizuka_akemi)でも「着物×アート」の視点から展覧会の魅力を精力的に発信している。