公開日:2023年6月1日

6月に見たい全国おすすめ展覧会20選:サグラダ・ファミリア、古代メキシコ、抽象絵画の変遷、ニュースの版画、アニメ背景美術から、蔡國強、三沢厚彦、片岡球子、中園孔二らの個展まで

2023年6月にスタートする全国20のおすすめ展覧会を紹介

篠原清興 栄城湾上陸后之露営 明治28(1895) 大判錦絵三枚続 町田市立国際版画美術館蔵

6月に開幕する全国の主要な展覧会をピックアップ! 気になる展覧会は先日リリースしたウェブ版でのログインや、TABアプリでブックマークがおすすめ。アプリでは、開幕と閉幕間近をプッシュ通知でお知らせします。

  1. ガウディとサグラダ・ファミリア展(東京国立近代美術館)
  2. 古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン(東京国立博物館)
  3. 蔡國強 宇宙遊 ―<原初火球>から始まる(国立新美術館、東京)
  4. ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ(アーティゾン美術館、東京)
  5. 出来事との距離 -描かれたニュース・戦争・日常(町田市立国際版画美術館、東京)
  6. 本橋成一とロベール・ドアノー 交差する物語(東京都写真美術館)
  7. フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン(東京都庭園美術館)
  8. ポール・ジャクレー 「フランス人が挑んだ新版画」(太田記念美術館、東京)
  9. 木島櫻谷 ― 山水夢中―(泉屋博古館東京)
  10. 三沢厚彦 「ANIMALS / Multi-dimensions」(千葉市美術館)
  11. 劉建華(リュウ・ジェンホァ) 「中空を注ぐ」(十和田市現代美術館、青森)
  12. 面構 片岡球子展 たちむかう絵画(岩手県立美術館)
  13. 冨井大裕「みるための時間」(新潟市美術館)
  14. 「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容―瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄(富山県美術館)
  15. アニメ背景美術に描かれた都市(谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館、石川)
  16. 吹けば風(豊田市美術館、愛知)
  17. ホーム・スイート・ホーム(国立国際美術館、大阪)
  18. ルーヴル美術館展 愛を描く(京都市京セラ美術館)
  19. 中園孔二 「ソウルメイト」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川)
  20. 朝倉文夫生誕140周年記念 猫と巡る140年、そして現在(大分県立美術館)

ガウディとサグラダ・ファミリア展(東京国立近代美術館)

スペインのバルセロナで活躍した建築家アントニ・ガウディ(1852-1926)。本展では、彼の代表作であり、完成が見えてきたサグラダ・ファミリアに焦点を絞り、その建築プロセスを通じて彼の建築思想や創造性に迫る。ニュースはこちら。なお本展は滋賀・佐川美術館、名古屋市美術館にも巡回予定だ。

会場:東京国立近代美術館
会期:6月13日~9月10日

古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン(東京国立博物館)

メキシコは35の世界遺産を有し、なかでも古代都市の遺跡群が高い人気を誇る。本展は、独自の展開を遂げたメキシコ古代文明のなかで、「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」という代表的な3つに注目。マヤの「赤の女王」などを筆頭に、古代メキシコの至宝約140件が集結する。

会場:東京国立博物館
会期:6月16日~9月3日

蔡國強 宇宙遊 ―<原初火球>から始まる(国立新美術館、東京)

国立新美術館では、中国出身の作家、蔡國強(ツァイ・グオチャン/さい・こっきょう、1957-)の大規模な個展が、サンローランとの共催のもと開催される。蔡は東洋哲学、社会問題を作品の基本コンセプトに、火薬絵画、インスタレーションや屋外爆破プロジェクトなどを発表してきた。本展では、彼の作品「原初火球」を宇宙の誕生になぞらえ、その制作の全貌に迫る。

会場:国立新美術館
会期:6月29日~8月21日

ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ(アーティゾン美術館、東京)

19世紀末から第一次世界大戦の勃発まで、「ベル・エポック」の時代として芸術を生み出す活気に溢れていたフランス。その影響もあって、20世紀初頭においてフォーヴィスム、キュビスムといった新たな絵画のスタイルが展開され、抽象表現へ向かうことになった。本展はそんなフランスの戦前から戦後にかけての抽象表現の動向に注目しつつ、さらに日本の実験工房や具体など、世界中で同時多発的に興った抽象絵画の歩みを展望する。

会場:アーティゾン美術館
会期:6月3日〜8月20日

出来事との距離 -描かれたニュース・戦争・日常(町田市立国際版画美術館、東京)

ニュースや戦争を、アーティストはどのように描いてきたのか。本展では、フランシスコ・ゴヤ、浜田知明、松元悠、月岡芳年、小林清親、畦地梅太郎、馬場檮男、石井茂雄、郭徳俊、土屋未沙、小野寺唯、ソ・ジオらの作品を通じて、その経緯に迫る。とりわけ、特集が組まれる松元悠のリトグラフに注目したい。松元はニュースの現場に足を運び、当事者の姿を自画像として想像的に描くことで、日常と地続きにある「事件と人間の不可解さ」に分け入る若手作家だ。

会場:町田市立国際版画美術館
会期:6月3日~7月17日

本橋成一とロベール・ドアノー 交差する物語(東京都写真美術館)

本展は、本橋成一(1940-)とロベール・ドアノー(1912-94)というふたりの写真家に注目。本橋は東京に生まれ、50年以上にわたり、写真と映画によって、揺れ動く社会とそこに暮らす人々の姿を記録してきたいっぽう、ドアノーは自身が生まれたパリ周辺を舞台として、身近にある喜びをユーモラスに撮影してきた。彼らは生まれた時代・地域が異なるものの、奇しくも炭鉱、サーカス、市場といった被写体のテーマや、被写体となる人々に優しさや愛情を向けることの大切さを語っていたことも興味深い。東京都写真美術館では、6月2日から「田沼武能 人間讃歌」も開催される。

会場:東京都写真美術館
会期:6月16日~9月24日

フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン(東京都庭園美術館)

東京都庭園美術館では、フィンランドの「アートグラス」に焦点を当てた展覧会がスタート。「アートグラス」とは、1917年にロシアから独立し国家としてのアイデンティティを取り戻すことを目指したフィンランドで作られた、芸術的志向の高いプロダクトのこと。1930年代の台頭期から50年代に始まる黄金期、そして現行のデザイナーが手がけた優品約140件を通して、フィンランド・グラスアートの系譜をたどる。

会場:東京都庭園美術館
会期:6月24日~9月3日

ポール・ジャクレー 「フランス人が挑んだ新版画」(太田記念美術館、東京)

フランス・パリに生まれたポール・ジャクレー(1896-1960)は3歳で来日。月岡芳年の孫弟子にあたる池田輝方・蕉園夫妻から日本画を学び、南洋やアジアで暮らす人々を色鮮やかな木版画で描いた。本展では新版画の潮流のなかでも異彩を放つジャクレーによる、162点の作品が紹介される。

会場:太田記念美術館
会期:6月3日~7月26日

木島櫻谷 ― 山水夢中―(泉屋博古館東京)

近代の京都画壇を代表する存在として近年再評価がすすむ日本画家、木島櫻谷(このしま・おうこく1877-1938)。動物画が著名な櫻谷だが、本展では彼が生涯描き続けた山水画に注目。風景のスケッチや、絵画、盆石など、多彩な山水画を一望する絶好の機会だ。

会場:泉屋博古館東京
会期:6月3日~7月23日

三沢厚彦 「ANIMALS / Multi-dimensions」(千葉市美術館)

三沢厚彦(みさわあつひこ、1961–)は木彫りで動物を作り、油絵具で彩色する「ANIMALS(アニマルズ)」シリーズで知られる彫刻家。本展のテーマは「多次元」。千葉市美術館全体を展示会場として、1990年代の初期未発表作から最新作まで、200点を超える彫刻と絵画が配される。

会場:千葉市美術館
会期:6月10日〜9月10日

劉建華(リュウ・ジェンホァ) 「中空を注ぐ」(十和田市現代美術館、青森)

劉建華(リュウ・ジェンホァ、1962-)は中国における経済や社会の変化をテーマに、土や石、ガラス、陶磁器などを使って立体作品やインスタレーションを制作してきた。本展では、ペットボトルや靴などの日用品を磁器で制作した《Discard》や瓶や壺の口と首の部分だけを切り取った最新作《Porcelain Tower》など、初期から近年までの多様な作品が並ぶ。

会場:十和田市現代美術館
会期:6月24日~11月19日

面構 片岡球子展 たちむかう絵画(岩手県立美術館)

型破りな画面構成と大胆な色使いで知られる日本画家・片岡球子(1905-2008)。その代表作である「面構」シリーズが一堂に集結する。本作は、61歳で愛知県立芸術大学の教授に就任した際に、若い学生とともに新たな日本画を目指す決意のもと制作を始めた作品。以降、2004年まで38年間描き続けたライフワークとも言えるシリーズだ。本展ではシリーズ作品43点に加え、初公開の小下図も展示される。

会場:岩手県立美術館
会期:6月3日〜7月17日

冨井大裕「みるための時間」(新潟市美術館)

画鋲やスーパーボール、ハンマーなど、日用品を組み合わせることで思いがけない造形の「作品」を制作してきた冨井大裕(1973-)。本展は冨井自身によるディレクションのもと、「展覧会」を装置と定義。作品というものがいかにして生成されるのか、鑑賞者に問いかける。

会場:新潟市美術館
会期:6月6日〜7月17日

「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容―瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄(富山県美術館)

千葉市美術館で開催された本展は、富山県美術館へ巡回。本展は4人の作家を手がかりに、昭和期日本の写真表現を紹介する展覧会。写真におけるシュルレアリスムを説いた瀧口修造、瀧口とともに「前衛写真協会」を設立した阿部展也、ふたりに魅了され「なんでもない写真」というシリーズを手がけた大辻清司、大辻の愛弟子である牛腸茂雄。昭和という時代のなかで、4人の作家が作り上げた「前衛」に迫る。フォトレポートはこちら

会場:富山県美術館
会期:6月3日~7月17日

アニメ背景美術に描かれた都市(谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館、石川)

本展は、1980年代末から2000年代初頭にかけて制作された日本を代表するSFアニメーション作品の背景美術に焦点を当てる企画。緻密な手書きの背景美術はもちろん、それらを描くために参照された書籍やロケハン写真、クリエイターへのインタビューなどが公開される。紹介されるアニメーションなど、詳細はニュースをぜひチェックしてほしい

会場:谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館
会期:6月17日〜11月19日

吹けば風(豊田市美術館、愛知)

本展タイトルの由来は、明治生まれの詩人・高橋元吉が詠んだ詩の「咲いたら花だった 吹いたら風だった」という一節。普段は見過ごされ、忘れられてしまうような細やかな発見や驚きを見つめ直すというコンセプトのもと、川角岳大、澤田華、関川航平、船川翔司の作品が公開される。4名とも、80年代後半から90年代前半生まれの作家であることにも注目だ。

会場:豊田市美術館
会期:6月27日~9月24日

ホーム・スイート・ホーム(国立国際美術館、大阪)

「ビター」な社会が続くなかで、国立国際美術館は「ホーム・スイート・ホーム」を問いかける展覧会を企画した。紹介されるのは、アンドロ・ヴェクア、竹村京ら国内外で活躍する現代美術作家8名による作品。作品から、歴史や記憶、アイデンティティなどのキーワードを示し、家や国、家族、コミュニティといった「ホーム」にアプローチする。

会場:国立国際美術館
会期:6月24日〜 9月10日

ルーヴル美術館展 愛を描く(京都市京セラ美術館)

ルーヴル美術館の名品が京都へ。本展で公開されるのは、膨大なルーヴル・コレクションからセレクトされた、「愛」をモチーフとする作品たち。18世紀フランス絵画の至宝ともいうべきジャン=オノレ・フラゴナール《かんぬき》、フランス新古典主義の傑作であるフランソワ・ジェラール《アモルとプシュケ》をはじめ、74点の名画が揃う。詳細はニュースを、国立新美術館での展示風景はフォトレポートをチェックしてほしい。

会場:京都市京セラ美術館
会期:6月27日~9月24日

中園孔二 「ソウルメイト」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川)

見る者に鮮烈な印象を与える絵画を、多彩なバリエーションで制作した中園孔二(1989-2015)。中園は東京藝術大学卒業後、関東を拠点に制作活動を行ったのち、2014年に香川県に移住したものの、翌年生涯の幕を閉じた。本展では、過去最大規模の個展として約200点の作品が一堂に集結。彼が見ていた「一つのもの」に迫る。

会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
会期:6月17日~9月18日

朝倉文夫生誕140周年記念 猫と巡る140年、そして現在(大分県立美術館)

日本の近代彫刻を牽引した朝倉文夫(1883-1964)の個展が、出身地である大分県でスタート。猫の作品を中心にその創作を振り返る。朝倉の彫刻に加えて、大分を拠点に活躍する美術家・安部泰輔と、絵本作家/美術家のザ・キャビンカンパニーの作品も展示される。

会場:大分県立美術館
会期:6月9日~8月15日

浅見悠吾

浅見悠吾

1999年、千葉県生まれ。2021〜23年、Tokyo Art Beat エディトリアルインターン。東京工業大学大学院社会・人間科学コース在籍(伊藤亜紗研究室)。フランス・パリ在住。