今年のシルバーウィークは、9月13日〜15日と、9月20日、21日、23日。22日は平日だが後半は最大4連休となる。同期間中に、全国の美術館や博物館で開催されている、注目の展覧会をエリア別に紹介。気になる展覧会を見つけて、お出かけに役立てて欲しい。
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「ピタゴラスイッチ」「バザールでござーる」「だんご3兄弟」「スコーン」「モルツ」「ポリンキー」「I.Q Intelligent Qube」「0655/2355」など、現代の日本で生活する者にとってどれもお馴染みのCMや作品の数々を生み出してきた佐藤雅彦。その約40年の歩みを振り返りつつ、その作品の裏側にある方法論を見せるという、これまでにない展覧会だ。レポートはこちら。
会場:横浜美術館
会期:6月28日〜11月3日

開館30周年を迎える千葉市美術館による、現代美術コレクションの集大成展。1991年の建築着工時より継続して収集されてきた戦後美術の多様な展開を、精選された約180点でたどる。近世から現代、房総ゆかりの作品まで幅広くカバーする同館のコレクションは、その独自性と体系性で高い評価を獲得しており、1996年の「Tranquility―静謐」展以来120回を数える現代美術展の蓄積が、今回の充実した内容に結実。参加作家には草間彌生、河原温、田中敦子、中西夏之、河口龍夫、小清水漸、菅木志雄、杉本博司、辰野登恵子、吉澤美香らが名を連ねる。レポートはこちら。
会場:千葉市美術館
会期:8月2日〜10月19日
活動初期から自然や都市の風景、著名人のポートレイト、広告写真まで幅広い分野で活躍を続けてきた上田義彦。時代とともに変化する作風を見せながらも、一貫して普遍的な美を追求する姿勢で国内外から高い評価を受けている。公立美術館では約20年ぶりとなる本展は、1980年代の活動開始から現在まで40年間にわたる創作の軌跡を、自ら現像とプリントを手がけた約500点の作品で総覧する貴重な機会となる。
会場:神奈川県立近代美術館 葉山
会期:7月19日〜11月3日

オーストリア出身のアーティスト、エルヴィン・ヴルムの日本初個展。彫刻を学んだヴルムは、石膏や金属などの伝統的な彫刻にとどまらず、写真や映像、絵画といった多様なメディアを用いて、彫刻の概念を拡張している。身の回りの日用品を使い、社会に存在する規範や制度、権力の構造をユーモラスに炙り出し、作品を通じて鑑賞者に様々な問いを投げかける。最新作《学校》も初公開される。レポートはこちら。
会場:十和田市現代美術館
会期:4月12日〜11月16日
2020年の開館以来、精力的に国内外の先進的なアーティストを紹介し続けている弘前れんが倉庫美術館。その開館5周年記念展は、同館が歩んだこれまでの5年間をたどりながら、未来のユートピアについて考えるきっかけとなるような展覧会だ。奈良美智、小林エリカらをはじめとした現代アーティストが手がける、弘前や津軽固有の風土、歴史、⺠俗、文化に根差したコミッション・ワークにも数多く触れることができる。レポートはこちら。
会場:弘前れんが倉庫美術館
会期:7月11日〜11月16日
1980年代前半、ダンボール作品で公募展の大賞を立て続けに受賞し一躍時代の寵児となった日比野克彦。90年代にはかたちのないものの表現を模索し、2000年代にはアートプロジェクトへと舵を切り、2010年代以降は美術館館長や大学学長として美術を社会に結びつける実践を展開している。本展では複数のフィールドを横断する日比野を、関わる人々の視点から深掘りする。絵本や漫画を織り交ぜながら紹介し、手つきや振る舞いに着目することで、拡張してやまない芸術実践に通底するものを探る。レポートはこちら。
会場:水戸芸術館 現代美術ギャラリー
会期:7月19日〜10月5日
水戸市内原郷土史義勇軍資料館が「現代アート×義勇軍」という新たな記憶継承に挑む展覧会を企画。満蒙開拓青少年義勇軍として旧満州に渡った少年たちの多くが亡くなったとされる悲劇の歴史を、義勇軍隊員を祖父に持つ現代美術作家・弓指寛治が問い直す。弓指は社会や歴史の不条理を鋭く描く作品で注目を集めており、本展では故郷・三重県から送出された五十鈴義勇隊開拓団にスポットを当てた新作を展示。「被害者」であり「加害者」でもある複雑な立場を背負った元隊員たちの物語を、「不成者」というタイトルに込めて描き出す。インタビューを公開中。
会場:水戸市内原郷土史義勇軍資料館
会期:8月1日〜10月26日
Nerhol(ネルホル)は、グラフィックデザイナーの田中義久と彫刻家の飯田竜太によるアーティストデュオ。連続写真や映像から抽出した画像の出力紙の束を彫り刻む独自の制作手法を基軸としつつ、その観測範囲を他者や他領域と接合し、時空間を超えた因果関係の複雑な絡み合いや、不可視化された物語までも語りうる豊かな表現へと深化させてきた。新作・未発表作を中心に構成する本展は、彼らの多層的な探究の現在地と表現言語の新たな展開を目撃する機会となる。詳細はニュースをチェック。
会場:埼玉県立近代美術館
会期:7月12日〜10月13日
南仏アルルで制作された《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》(1888)、最晩年にフランスのオーヴェール=シュル=オワーズで制作された《アザミの花》(1890)をはじめ、3点のフィンセント・ファン・ゴッホ作品を収蔵しているポーラ美術館。開館以来初のゴッホをテーマにした展覧会となる本展では、ゴッホの作品や存在が様々な時代や地域に与えたインパクトを検証するとともに、現代における新たな価値を考察する。レポートはこちら。
会場:ポーラ美術館
会期:5月31日〜11月30日
建築界でもっとも栄誉ある賞のひとつ、プリツカー賞を2024年に受賞した山本理顕。彼の過去最大規模の展覧会が、代表作である横須賀美術館で開催される。山本は建築におけるパブリックとプライベートの境界を「閾(しきい)」と呼び、地域社会とのつながりを生む空間として重要視してきた。本展では、50年にわたる設計活動を、およそ60点の模型や図面、スケッチ、ドローイングを通して紹介し、活動の軌跡とその背景に迫る。
会場:横須賀美術館
会期:7月19日〜11月3日
広島市立基町高等学校の生徒が被爆者から聞き取った記憶を「次世代と描く原爆の絵」として描く活動に着想を得た企画。戦地で過酷な体験をした岡本太郎が核をテーマに挑んだ代表作《明日の神話》とともに、現代の第一線で活躍する9組の作家による作品を展示。核の惨禍を乗り越えて明日に向かう人間像を描いた岡本作品に呼応し、現代作家たちも戦争や原爆の記憶を現代の問題として独自の視点で表現する。レポートはこちら。
会場:川崎市岡本太郎美術館
会期:7月19日〜10月19日
ポストモダン以降、絵画は従来のタブローとしての絵画から脱却し、絵画それ自体をメディウム化する方向へと展開してきた。オブジェを組み合わせてイリュージョンを排除するような絵画、空間全体を取り込むような絵画、作者が架空と実在を行き来するような絵画、現実と虚構に揺さぶりをかける絵画、パフォーマンスや映像を組み合わせた絵画、絵画それ自体の存在を問うような絵画などの取り組みは、現実の世界と深いつながりを結んでいる。本展では、対極する戦後ドイツの画家、ゲルハルト・リヒターとアンゼルム・キーファーを起点に、絵画における表現の可能性を探究し、それぞれの手法や視点から独自の「絵画」に取り組むアーティストの作品が集結する。レポートはこちら。伊藤ガビンによるレビューも公開中。
会場:金沢21世紀美術館
会期:4月29日〜9月28日
2010年から3年ごとに開催されていた「あいちトリエンナーレ」。前回から名称を変え、今回で6回目の開催となる。『ArtReview』が毎年選出する「Power 100」で2024年の1位に選出されたフール・アル・カシミが芸術監督を務める。テーマは、モダニズムの詩人アドニスによる詩から着想を得て構想された「灰と薔薇のあいまに」。ダラ・ナセル、沖潤子、小川待子、アドリアン・ビシャル・ロハスをはじめ、約50組のアーティストが参加する。詳細はニュースをチェック。
会場:愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなか
会期:9月13日〜11月30日
アメリカ西海岸で最初期に収集された充実した西洋絵画のコレクションを有するサンディエゴ美術館と、東アジアにおいて唯一の体系的な西洋絵画のコレクションを持つ国立西洋美術館。本展では、両館の所蔵品から88点を掛け合わせ、ルネサンスから19世紀印象派までの600年にわたる西洋美術の歴史をたどりながら、「作品をどのように見るとより楽しめるか」を提案する。関連する作品をペアや小グループごとに展示、比較することで、鑑賞者が様々な角度から絵画が持つストーリーを深掘りできるよう誘導する。国立西洋美術館で開催された本展のレポートはこちら。
会場:京都市京セラ美術館
会期:6月25日〜10月13日
思想家の柳宗悦、陶⼯の河井寬次郎、濱⽥庄司が京都に集うことで始まった「⺠藝」運動。誕生から100年という節目を迎える本年、京都において、日本の近代化のなかで一般大衆にも広がった民藝運動の無名性、簡潔性、そして単純さに美を見出す精神を考察する展覧会が開催される。「民藝」という言葉が誕生するきっかけとなった木喰仏を始め、黒田辰秋、青田五良の作品、「民藝館」や「三國荘」のために制作された河井寬次郎、濱田庄司、バーナード・リーチらの工芸作品、柳宗悦らによる日本全国の蒐集品や、芹沢銈介、棟方志功の作品も紹介される。
会場:京都市京セラ美術館
会期:9⽉13⽇〜12⽉7⽇
現在も世界の美術館や芸術祭で作品が紹介され、注目を集め続けている草間彌生。アイテムだけでなく、店舗そのものもドットで覆ったルイ・ヴィトンとのコラボレーションでも話題を呼んだ。本展は、東京、ミュンヘン、ヴェネチア、北京、ソウル、大阪のエスパス ルイ・ヴィトンにてフォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションを公開する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環で実施されるもの。草間によるインスタレーションや絵画など、国際的なアートシーンに登場した初期から近年の作品までが展示される。レポートはこちら。
会場:エスパス ルイ・ヴィトン大阪
会期:7月16日〜2026年1月12日
18歳の坂本龍一が1970年の大阪万博で体験した音楽と美術との出会いを起点に、その体験がいかに創作の源泉となったかを辿る展覧会。万博のために制作されたバシェの音響彫刻を展示するとともに、東京藝術大学のバシェ修復プロジェクトチームが坂本のために新たに制作した音響彫刻も公開される。さらに、坂本の演奏データをもとに彼が愛用したグランドピアノで音楽を再生するプログラムも予定されており、坂本龍一の創造の原点に迫る貴重な機会となる。レポートはこちら。
会場:VS.(ヴイエス)
会期:8月30日~9月27日
神戸・六甲山上の豊かな自然を舞台に繰り広げられる現代アートの芸術祭「神戸六甲ミーツ・アート」が今年で16回目を迎える。2010年から毎年開催されてきた本祭では、約60組のアーティストによる作品を山上の各会場に展示し、散策しながらアート鑑賞を楽しめる特別な体験を提供。六甲山の美しい眺望と現代アートが織りなす独特な空間で、自然とアートの調和から生まれる感動を存分に味わうことができる。レポートはこちら。
会場:六甲ガーデンテラスほか
会期:8月23日〜11月30日
気鋭の作家によるインスタレーションを紹介する展示シリーズ「scopic measure」の第17弾として、ベルリンを拠点とするアーティスト、マヤ・エリン・マスダによる個展が開催される。本展では、放射線による皮膚の変容や汚染に晒された動物・土地の変化をテーマとした新作を中心に、過去作《Pour Your Body Out》(2023年)などを展示。現代社会が直面する環境問題を、身体性の視座からとらえ直す意欲的な試みとなる。インタビューも公開中。
会場:山口情報芸術センター
会期:7月5日〜11月2日
1988年に宇和島市に活動の拠点を移し、35年にわたって同地で制作を続けている大竹伸朗の大規模個展。同館での個展は、2013年「大竹伸朗展 ニューニュー」以来12年ぶり。今回は活動の初期段階から取り組んできた「網膜」を通奏低音とし、シリーズの新作・未公開を中心に、さらに「網膜」に接続する多様な作品群を谷口吉生建築の空間を生かして展覧する。様々な関連プログラムも実施予定。レポートはこちら。
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
会期:8月1日〜11月24日
1975年に終結したベトナム戦争は、ベトナムが大国アメリカを退け、世界の枠組みを変えた歴史の転換点とされる。本展では植民地支配から独立闘争、難民問題、グローバル化まで、近代以降の世界的課題を経験し続けたベトナムの激動の100年を、同国アーティストによる美術作品やグラフィック約110点で振り返る。祖国の理想風景を描いた絵画から革命を鼓舞するポスター、家族の記憶から歴史を語り直す現代美術まで、多様な表現を通じて展開される。
会場:福岡アジア美術館
会期:9月13日〜11月9日